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未来明るき若者よ

 さて、いかがだった地球の皆? まあ、読んでもらえばわかったと思うけど、俺はもともと小説家を志してたんだ。まぁ何の賞もとったことの無い、素人同然の身だったけどな。

 あの頃は一日24時間、ず~と机に向かっててさ。文字通り食うものも食わず、飲むものも飲まずで、何とか俺の最高傑作を書き上げたところだったんだ。……まあ落選しちまったけどな! はっはっは……はぁ~。

 けど今考えるとやっぱりあれが落ちるのはおかしいだろ絶対賞とったやつ審査員にワイロ渡してんだよだって俺昔そんな話読んだことあるしいやいや仮にも小説家を目指すものがそんな考えではこれからの日本の活字業界はってああそういや俺にはもう関係ないか……。

 ああ失礼。悪い癖でね。たまにこうして独り言が出るんだよ。ごめんごめん。ちなみに何か聞こえた? 

 聞こえなかったと。うん。貴方さては日本人ですね、その平和万歳主義は。

 閑話休題。さて本題に戻そう。え~とそもそも何で、あんな胸糞悪い思い出を話したんだっけ? ああそうだ。俺の名前がカタカナで書かれていることについてだったね。

 え? それはもういい? はやく異世界に行った後の話をしろ?

 オーケーオーケー。いいぜ~、俺だってそっちの方を早く書きてーしな。

 ホンジャ○カ、始めるとしよう。


 ☆


「ヘールプ! プリーズヘルプミー!」


「ええい訳の分からぬことを叫んでおらんと、しっかり走らんか! 追いつかれるぞ!」


 ふっざけんな! どう考えても、巻き込んだのはテメーだろうが!

 何でか知らねーが俺は今、無茶苦茶人相の悪い連中に追われている。どいつもこいつも絶対に人を2、3人は殺ってる。間違いない。

 俺のことを起こしたおっさん。名前をオッサンというらしい(親は何考えてそんな名前つけたんだ)。とりあえず目を覚ましてから自己紹介を済ました後、こっちの事情を説明しようとした。

 部屋で首を吊ったんだけど、何でお外にいるの? ボクちゃん?

 もちろんかわいらしく小首を傾げながらだ。そこら辺の約束は守る男なのさ俺は。……寝ぼけてたんです。許してください。

 さて、そんなこと聞かされりゃ、まともな人間がとる行動なんか決まってるよな?


「なんだ……酔っ払いか。真昼間から、良い若いもんが何してんだ。嘆かわしいことだな、まったく」


 ……うん。まあそうなるわな。


「違うっての。いや自殺しようとしたのは、そりゃ嘆かわしいかもしんないけどね? 酒なんて飲んでないって。そもそも買う金が無い――」


「いかん、いかんぞ坊主。未来明るい若者が、そんなことでどうすんだ。酒は二十歳を過ぎてから。低年齢での飲酒は体に害をもたらすんだぞ」


「いや至極真っ当な説教ありがとう。でも普通自殺しようとしたことに対して説教しない? 立派な大人だったらさ」 


 てか二十歳は、とっくの昔に過ぎてるよ。

 その後もオッサンはずっと何か言っていたが、正直俺は一切聞いていなかった。いやだってさ……何でこのオッサン、ファンタジーに出てくる商人みたいな格好してるんだ? 

 それに周りの景色もおかしい。だってどう見ても日本じゃない。こんな広い平原、少なくともコンクリートジャングル東京には無いぞ。道もアスファルトじゃないし。


「なぁ、オッサン」


「いいか? 確かに今の時代は、若者の自由を尊ぶ風潮にある。けど自由ってのは責任が伴うんだから――」


「おいこらオッサン、どっかで聞いたようなこと言ってないで、俺の話を聞いてちょうだい」


「――今こそ若い世代の力が……って、何だどうした?」


 よしよし、やっとまともに話ができるな。


「色々言いたいことはあるんだけど、とりあえずまずは一つ!」


 俺は右手を前にだし、人差し指を立てる。……なんか体に違和感があるけど、まあいいや。


「お、おお。なんだよ?」


 ふっ、俺の眼力にたじろんでやがる。よしよし、じゃあさっきから気になってたんだけど、


「後ろから、すごいスピードでなんか来てるんだけど、あれって知り合い?」


 俺は立てた指をそのままに、オッサンの後ろを指さす。説教が始めてから現れたんだけど、何だあれ馬か? 牧歌的なところだな。


 俺がそう伝えると、オッサンの顔が真っ青になっていく。おお! 人の血の気が引くところって初めて見たな。


「……――これはいかん!」


 て、ちょっと何、何、なにーーー!?


 オッサンは急に走り出した。どうやら向こうに止めてある……なんだあれ、馬車? 荷台がついてるから荷馬車か? それに乗り込もうとしてる。先頭にいるのは、どう見ても馬じゃないが。


「ちょ、オッサン! どうしたんだよ急に?!」


 なんだよやめてくれよ。何が起きてんだか知らねーけど、怖くなってくるじゃないか。

 オッサンは俺の方を一瞬振り返ると、さっきまでとは違う、鬼気迫る声で、


「お前も早く逃げろ!あれは――盗賊だ!」 


 よりにもよって、そんなことを言いやがった。

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