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辺境高校生  作者: にしむらぱすた
【本編】
49/64

第47話 夏の花火

 夏祭りが始まった。


 この近辺では割と規模の大きい、宮川の花火大会も込みで楽しめるということで、俺たちはまたも集まることに。

 かなり家々の距離には隔たりがあるのにこうして会うことができるのは、同じ学校に通っているからという理由のほかに、同じ部を通じて知り合えたメンバーだからというところも大きい。

 

そして何より俺たちは、仲がいい。

 喧嘩やどつき漫才風味なやりとりも多々あるが、まあそういうのも含めてきっと仲良し、ということにしておこう・・・。

 

 というか、夏祭りと聞いて心穏やかではいられんよね。実際。

 祭り特有の華やかさというものにはやはり惹かれる。

 宮郷線応援プロジェクトの数々のお陰で年中お祭りみたいな事業に参加していても、やっぱりそう思うね。

 花火といえば夏だけだからなあ。普通。


 メイン会場は打ち上げが行われる宮郷線・比留間(ひるま)-十日市(とうかいち)駅区間あたりだ。

 線路に平行して走る三登瀬(みとせ)川の河川敷には花火師や祭りの実行委員会関係者らで占められている。

 近づき過ぎると危険なので、線路側の川土手からか、川を隔てて反対側の旧国道あたりから花火を鑑賞するようになるのだろう。

 

 既に会場付近は大量の人が出てきており、場所によっては迷子になりかねない。

 この周辺だけじゃなく、明らかに他の市町村からもかなりの人が来ていると思われる。


 旧国道は、向かいに新道バイパスが開通して交通量が減ったのをいいことに、花火見物に遠方から押しかけた自家用車組のマイカーの路上駐車であふれている。

 みんな、花火好きだよなあ・・・。



 俺と小山は列車で来た。

 花火大会が終わった後だと帰りの列車がない。

 バスなら近くまで行く。

 バスで帰ってもいいなと思ったが、俺は高橋の、小山は篠田の家に泊まらせてもらえることになった。清川は聞いてないがたぶん篠田家に行くのだろう。


「見て見て!女子~ズは浴衣で揃えて来たよ!」


 小山の言うとおり、皆それぞれに特徴のある柄物の衣装を身に(まと)ってらっしゃる。

 華やかだ。


「フフフ、そしてわたくしもよ!」


 うぉ・・・水谷教諭・・・!

 小山が水色を基調とした朝顔柄、篠田がピンクをベースにした撫子(なでしこ)柄、清川はなぜか浴衣の上からエプロンつけててよくわからんが、割烹着(かっぽうぎ)か?コスプレ衣装??

 ミズタニンは紫の藤かなにかの図案の柄を着ている。

 

 高橋は・・・甚平(じんべえ)か。俺と同じだ。

 俺もじいちゃんが昔持ってたやつを借りた。使わないそうなので。

 意外としっくり。


「先生、今日は部活じゃないので別に合わせなくても・・・」


「ちょっと!何蔵田君!来ちゃだめなの!?」


「いや、そうじゃないけど・・・俺たちと接しても高校生に戻れるわけじゃな・・・いてぇ!」


 チョップが頭に降ってきた。久しぶり。そして自業自得。


「いつも一言多いなーこの生徒は!」


「あはは・・・」


 小山が引き吊った笑みを浮かべている。

 が、もう彼女の手元にはホットドッグが握られている。


「早っ!小山、もう何か買ったのか!?」


「私だけじゃないよー」


 小山が指差すので篠田や清川を見るが、彼女らももうりんご飴やらわたがしやらを手にしていた。


「買い食い、お前得意だったもんな」


「得意というかー。蔵田君も何か買いなよ~」


 ひょい、と小山の右手からホットドッグを失敬して一口。


「あー!あー!」


「一口だけ。うん、うまいぞ」

 


 川土手を皆で歩く。

 下の河川敷ではあわただしく人が動いているから、もうじき花火が打ち上げられるだろう。


「蔵田君も早く買うがいいさ」


「何を言っているのか小山は」


「味見と称して半分くらい食べてやるのだ・・・うはは」


「いや、もう買ったけど?あらびきポークウインナードッグ(大)」


「そりゃー!」


「うげっ」


 奪取されてしまった。

 バナナ並みに大きくて長いウインナーを無理して一気に口に突っ込んで・・・ああ、はしたない小山サン・・・。


「うまい!そしてちょっと口の中やけどした!」


「子供かよ」


 二人で苦笑。


「もうこのふたり、別行動でもいいんじゃない?」


 と篠田。


「うん、そんな気もするなー」


 清川にも同意されてしまう。


「こっそり、ふたりワールドに入ってるときを見計らって置いてっちゃおうよ!」


 よくわからん企みを口外する水谷氏。

 というか、ぜんぜんこっそりじゃないのですが。


「だめだめ、みんなと一緒じゃないと!」


 小山の言うとおりである。



「なんだ?あっち。やけに賑やかね」


 ミズタニンが言うので音のするほうを向く。

 お祭り屋台の並びが途切れる先で、和太鼓の音や笛の音が。

 ぼんぼりがたくさん見えるし人がせわしなく動いている。


「盆踊り会場みたいね」と篠田。


 そのようだ。

 会場は道路沿いの神社の境内で行われているようだ。


「踊りに行くの?」と高橋が誰に問うともなく尋ねるが、皆一様に首を振る。


「ここの露店の買い食いをやめるまでそういうことできそうにないぞ」


「蔵田の言うとおりだね!」


 食べ盛りなのはいいことだが、ウチの女子はやけに食べっぷりが豪快な連中ばっかりだな・・・。


「これおいしいわ!塩やきそば!」

 

 篠田は塩化ビニールのパックに入ったそれを箸でばさばさと口にかけ込んでいる。

 もうちょっと品をよくしないとだな、折角の美人が・・・まあいいか。篠田らしくて。


「盆踊りかぁ・・・」


「なんだ清川。何か麗しい思い出でもあるのか?」


「ああ、そうじゃなくて。そいえばレンタルしてた『死神の盆踊り』っていうDVD、まだ返却してなかったなーって」


「どんだけホラーマニアなんだよ・・・」


 つか、なんで死神が踊るのか。



 そうこうしているうちに盆踊りが終わった。

 そして、なにやらそれにあわせるように河川敷の下のほうからアナウンスが聞こえてくる。


「いよいよ打ち上げかな」


 甚平の袖に両手を突っ込んだ格好で高橋が呟いた。



 ヒューッ。

 パパッ。

 ドドン。


「おおー!」


「わー!」


 俺たちの間から沸き上がった声も、周囲の大勢の通行人の完成ですぐに掻き消える。

 一発目が華やかな大輪を上空に開いた。

 続いて二発、三発・・・。

 次々と夜空に上がる幻想の花々たち。


「よくまあ、ただの火薬で、これだけの色と形を表現できるわよねえ・・・」


 ミズタニンの言葉に納得だ。

 しかしそれこそが、花火職人の腕の見せ所なのだろう。


「たとえ一瞬で終わる花だとしても、生まれたからには綺麗に咲きたいわねえ・・・」


 どういうことを指して言ってるのか、それが自分のことなのか、あるいは俺たちのことを指しているのか。またはそれ以外の具体的な何かなのか。

 ミズタニンの声はすぐに次々と上がる花火の打ち上げ音に消されて言葉の意味もわからなかった。


 咲いて、パッと散る。

 桜や花火はそうした日本人の心を表していると言った人がいるが、まだ散らせるわけにはいかないものも世の中にはきっとある。





今更ですが、第1話の前に資料用として地域の設定資料を1枚挟んでおります。すいません、あとから挿入したため分かりにくかったと思います。鉄道路線図や話の中に登場する地名や地物など、登場人物の家の位置などを描いてみました。よければ参考にしてください。

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