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辺境高校生  作者: にしむらぱすた
【本編】
37/64

第35話 キャンプ(1)

 あれだけよく喋る中でよく泣いた小山も、数日経つとすっかり元の、ただよく喋る小山さんに戻っていた。

 強いのか、気持ちの切り替えが早いのか。

 ともかく元気になってくれるぶんには嬉しい。


 ただ、小山の持つ精神状態は危うい状態に今あるのではないか、と心配する声もある。

 それを指摘してきたのは篠田だった。


「とにかく一緒に居てあげて、悩み事を分散させること、何か思いつめたりしてないかよく観測して力になってあげること」

 

 篠田はそう言ってきた。


「それを言うならみんなも気をつけて見てやらないとな」

 

 と返すと「勿論。ただ、蔵田君はナナちゃんと行き帰り一緒だし、私達よりもっと気付くことがあると思うから」と清川。

 

 納得である。


小山に対する懸念の主たるものは、彼女の父がこよなく愛していた宮郷線に感情移入するあまり、小山自身がまるで宮郷線そのものを、父の分身であるかのごとくに思い始めているのではないか、ということだった。

 

 ということは、もし宮郷線がこの先廃止、ということにでもなれば。

 

 彼女は”父”の死を、二度見ることになる。

 

 存続活動を行うことで、現実の父の死から来る悲しみを、いくらかでも緩和できていたとするなら。

 その鉄道が終焉(しゅうえん)の時を迎えたときに、再び大きな悲しみが心を押しつぶすかもしれない。


 そんなことのないように、常に傍に居て守ってあげて、というのである。

 そして、私達もいつも傍にいる、というのだ。

 俺も、小山も。

 いい友を持ったものだ。


 また、小山は宮郷線の営業数字を事細かにチェックしていて、その動向に一喜一憂しているようだが、それにかなり気を取られているように見受けられる。

水谷教諭いわく、数字がうまく推移してるかどうかとかいうことを学生であるこちらが気にしても仕方ないことで、どうにもならないのでそういうことは鉄道職員や他の団体の方々に完全に任せて私達は学生としての本分にのっとって活動しましょう、特に今は夏休みだしそれしかできないことを、と言ってくれた。

 

 その通りだと思う。

 宿題もあるしな・・・みんなソツなくやってそうだが。


 

 小山を寂しがらせない対策の一環で、ミズタニンは裏でいろいろ考えてくれてたみたいだが、大きいイベントも終わったし、打ち上げも兼ねてキャンプなどしない?ということになった。

 

 それは面白い!

 ということで、全員即賛成となり、あわただしくスケジュールが組まれることに。

 皆が参加できる日にちを探して、8月中の2泊3日を確保。


 田舎を思い切り楽しもう!

 それが地域活性化へのひとつの道。

 遊び倒すことで見つかる魅力がきっとある。

 それを我々が実行し、伝えることで、周囲の皆が「田舎よいとこ!」という思いを抱き、多くの人がこの辺境の地に訪れたり鉄道の利用が促進されたりするのだ!

 

 という飛躍した意見を熱弁してらっしゃるのだが・・・。

 まあそれはともかく・・・


 場所は・・・ええと。

 どこにするんですか?水谷先生。




 

 宮郷線を使って移動してきた俺たちは、湯樽(ゆだる)駅で合流した。

 俺と小山は北の七ヶ瀬駅から、篠田、高橋、あとミズタニンは南の宮川、十日市駅方面から。

 清川はなんと歩いてきたという。

 家からの最寄り駅が湯樽だそうだからだ。

 

 この辺はなんといっても温泉が有名で・・・まあ、その有名度合いも全国規模とかではなくこの地方では、という意味合いだが・・・まあ、いくつか温泉旅館があったりもする。

 清川に「よく温泉とか入りに行く?」と聞くと「いやいや、そんな。家にお風呂あるし普段行かないよ」と返ってきた。

 

 まあ、そうだよな。

 でも「年に1度か2度くらいは行く」そうなのでおすすめを教えてもらいたいところだ。

 とか話してると水谷氏、「行くわよ」とのこと。

 もうどっかの温泉旅館に予約入れてるらしい。

 2日目に。


 初日はいわゆるキャンプ、テントを張って宿泊するタイプになるようだ。

「テントは持ってきたんですか?」との清川の問いに、「列車で来たのに持ってくるわけないじゃない」とミズタニン。

 どうも駅近くの河川敷広場にキャンプ場があるようだ。

 夜は温泉だけ利用して、戻ってきてごはんつくるとかそんな感じかな。

 

 夏の日差しはギラギラと熱く、周囲の森からはセミの大合唱が聞こえてくる。

 数種のセミによる混声は壮大かつ大ボリュームだ。



 河川敷に着くと、既に張られた状態のテントがいくつも点在していることがわかる。

 砂利を踏みしめながら、本日の宿になるであろうテントを探した。


「はい、男子こっち、女子はこっちね」

 

 見つかったのだろう。ミズタニンは隣接する左右を指し示した。


「人数が違うのにテントは同じ大きさだわー!」

 

 篠田が苦笑い。


「2対4で、よく考えたら倍だよ!」

 

 と小山。そうなるな・・・。


「女子はちょっと狭そうかな・・・」

 

 清川もそんな感想を言ってる。


「はい、ちょっと狭いですが、無問題!4人程度は元々入れる!男子は広いので全体のキャンプ用品とか入れる!乙女の必需品以外のモノはブチ込んでよし!」

 

 うわあ、物置か・・・。


「はい先生」


「何です蔵田君」


「先生は乙女に入りますか入りませんか」


「うっさい!」


「ぐおっ!」

 

 肘鉄をわき腹に・・・暴力・・・反対・・・。


「蔵田はまた余計な発言で自滅だね」


「高橋もたまには突っ込みいれてもいいんだぞ・・・」


「嫌だよ、カウンター食らいたくないしね」

 

 そうかそうですか。



 キャンプ場の管理施設で使用料金もろもろを支払い(といっても支払ったのはミズタニンだが。部費で)、竿を借りて高橋と釣堀に行き、釣り糸を垂れる。

 周囲にも夏休みの親子連れなどがちらほら見受けられる。

 女子たちは何してるのかと思うと・・・よくわからん。


「なあ高橋、女子は何してた?」


「なんかトランプやってたような」


「なにぃ」

 

 別行動か。

 というか、まだ日も高いのに・・・テントの中?

 まあ、暑いからなあ。


「俺も混ざってこようかな」


「だめだよ、釣竿借りてるし」

 

 うーむ。


「なあ。さっきから全然釣れる気配がないんだが・・・まさか釣れた魚で晩御飯とかいうんじゃないよな?」


「その可能性は高いね。というか、食べないわけはなさそうだし・・・」


「何そのサバイバル。しかも釣った魚、買わされるんだろ?釣れなきゃご飯に影響するし、釣れすぎてもアレだ・・・」


「釣れだしたら適当なところで切り上げればいいんじゃない?」

 

 もっともだ。


「しかし・・・全然釣れないな」


「釣れないねえ」

 

 センスがないのかもしれない。

 結局、1時間弱で高橋は3匹、俺は0匹だった。

 粘ってもなんか見込みがなさそうなのでやめた。

 あまりに冴えないので、つかみ取りのほうに挑戦。

 こちらは川のような堀に石をたくさん配置した囲いのなかに魚を放って、それを捕まえるというものだ。

 施設の人がやってきて、「とりあえず10匹放しますねー」といってアユを放り込んだ。

 ジーンズをひざ上までまくった俺と高橋が囲いの中で魚を追う。

 すばやい動作で岩陰に隠れるアユたち。


「ど、どこに行った・・・!?」

 

 大小さまざまな石を抱えたり、底の方に手を突っ込んでみたりと、これはこれで面白い。


「よし、1匹!」

 

 こっちのほうが爽快感があるぞ。

 しかも見込みがある・・・。

 

 女子らも後から様子を見にやってきたのだが、面白そうということで3人が飛び込んできた。

 先生はさすがにもう若くな・・・いや、もう無茶をする年ではなさそうなので遠巻きに笑みを湛えつつ見守っている。


「ナナ、そっち!」


「いまシノちゃんの足元に一匹逃げ込んだ!」


「キヨ、そこだ、いけー!」


「よしっ・・・取った!うわぁ、ヌルヌルしてるー!」

 

 めちゃ楽しそうじゃん。

 バシャーッ。

 不意に小山が転んだ。


「いてて・・・」


「大丈夫か、小山!」

 

 最近のこともあってか心配して俺が抱え起こす。


「大丈夫、尻餅ついただけ・・・ありがと」

 

 全身水浴び状態じゃないか。


「粗相が過ぎますなお嬢さん」


「てへへ、まったくで。それよりパンツまで濡れてしまったよこれは・・・」

 

 喋ったあとで赤面している。


「おし、水着に着替えるか!」篠田が女子ズに呼びかける。

 

 おお。水着とな。


「学校指定水着だがな!期待などさせて悪かったねー!」

 

 何を言っているのか篠田は・・・。


 それからスクール水着に着替えた女子らはとにかく思いのままにはじけまくり、アユを制覇したあとは、河辺に走っていって水掛けあいこなどをしている。

 

 まあこれで、小山のストレスも解消されてくれるといいな。


「うーん、いいなー!青春だなぁ~!」

 

 あごに手をあてて、うんうんと頷くミズタニン。


「しっかし3人ともいいスタイルしてるわねー!どうしてこんな美少女たちが集まってしまったものかしら!グラビアいけるわ!ちょっとマイカメラ取ってこよ!」

 

 急にミズタニンの行動があわただしくなる。


「しかし水辺で戯れる妖精たちのなんとまぶしいことよ!もれなくその姿態をいま、フイルムに!」

 

 誰ですかこのおっちゃん連れて来た人は。


「僕らも着替えとく?」

 

 と高橋。


「だなー。濡れると面倒だし、あとで泳げるしなぁ」

 

 ということで男子ズも水着に着替えてくることに。


「あっちにさ、飛び込みできる大岩があったぞそういえば」


「来る途中見た気がするね。蔵田はやってみるの?」


「うん是非」


「じゃあ僕もやろう!」

 

 と、我々は日没近くまで川遊びを堪能することとなった。


「おお・・・なんという均整の取れた美しい筋肉!若い男たちの健康的な身体!いいわねぇ~!これも!もれなくカメラに!いざ!」

 

 ・・・ミズタニンは相変わらずだった。




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