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辺境高校生  作者: にしむらぱすた
【本編】
28/64

第26話 事の顛末

 一時はどうなることかとヒヤヒヤした事件だったが、ふたを開けてみれば些細なことに端を発した問題だった。

 

今後つきまとわないこと、を誓約させられた石谷は、がっくりとうなだれた様子だったが、警察の立会いでは諦めざるを得ないだろう。

 

 小山も「赦してあげてください、立件しないでください」とつきまとわれの本人が嘆願するので、何事もなかったかのような感じだが、今回はあくまでも警告、ということで繰り返すようなら事件として扱う可能性があるので厳重に注意するようにとのこと。

 

 繰り返してまた警察沙汰にでもなったら噂があっという間に蔓延して「宮川の生徒がまたやらかしたようですよ!」と一部の人間の嘲笑の的になる。

 同じ高校に通う俺たちにとって(はなは)だ不名誉な事態だ。

 既に今年逮捕者が出てるからな・・・。

 

 特にあの、追川にとっては格好の醜聞になる。さんざ俺たちの学園を馬鹿にしてくれたからな。どっかで悪口誰かに言ってるかもしれんし。

 繰り返されては困るのだ。

 

 

 で、つきまといの要因だが。

 どうも聞くところによると彼は、1年の頃から小山のことが好きだったらしい。

 

 とにかく寡黙で人付き合いがヘタらしく、何の意思表示もできないまま2年になり、ふと気付くと我々のような部の連中に取り囲まれ、クラスが替わったことでさらに遠のいた気がしたそうだ。

 そこへ俺が現れて一緒に通学などはじめたものだから、焦りが生じ、気になって仕方がなかったようだ。だが接触することはためらわれる。だが、気になる。

 で、いつしか彼女のあとをつけるようになったということらしい。

 で、俺の行動も結構見張られていたらしい。

 なんか怖いな。

 感づいてる小山と解らなかった俺。

 俺、疎すぎだなぁ・・・。


「で、石井君はお咎めなし?」

 

 部室で清川が誰にともなく問う。


「なかったらしいわよ。普通に学校来てるじゃん。今朝見たわ」

 

 篠田が机の上でダルそうに呟く。


「そうなんだ。じゃあナナちゃんの恩赦のお陰だね」


「小山は心が広いからな」


「そんなことないない!」

 

 いつもの活気を取り戻したぽい小山部長。


「実際は警察にカード切られてるからな・・・もう一回履歴を作ったらアウト。レッド」


「蔵田はサッカーにたとえるの好きだね」


 ははは、と高橋。


「限られた言葉しか使ってないけどな」



「でも、見てみたかったなぁ、昨日のいきさつ」

 

 清川氏は俺たちの話を聞くうちにモリモリ興味が沸いてきたらしい。

 絵とか漫画を描いてるだけあって、一度掻き立てられた想像力は飛躍的に肥大化してしまっているかもしれない。

 

 

 今日の部室も全員揃いだ。

 いい感じに暑い。

 もう、夏だな・・・。

 篠田がぐったりしてるのは暑さのせいかな。

 家から持ってきたうちわを扇いでいる。


「まあ笑い事で済んでよかったけどなー」と俺が喋ると「どうかな」という答えが清川から帰ってきた。


「どういう意味なんだ?」


「意外と、粘着質の人はあきらめが悪いらしいからねぇ」


「そうなのか」


「うん」


「詳しいね、キヨは誰かと付き合ったことあるの?」

 

 篠田の問いにあわててぶんぶんと清川、手を顔の前で振る。


「ないない!一般にそう言われてるだけだよ~」


「じゃあ小山はほとぼりが冷めたらまたピンチになる可能性も?いやーないだろ。次やったら捕まるぜ」

「危害を加えたりしない限りは警察は捕まえたりしない、っていう人も居るよ。どうなんだろうね・・・」


「おいおい、清川、話を戻そうとすんなよ。折角収まりかけてるのに」


「ああ、わかった!」

 

 不意に机に突っ伏していた篠田が、がばと跳ね起きる。


「キヨの言いたいことわかった!」


「わかった~?シノちゃん!」

 

 コクコク、と頷いている。

 不気味だ。


「どういうことだ?」


「あんたが石谷にトドメを刺せば、万事解決するんじゃないかということよ!」


「はぁ?」


「にぶちんだなー!」


「だねー!」

 

 なんで意気投合するんだこの二人は。


「ああ、なるほどね」

 

 高橋まで。

 小山は?

 なぜかそわそわしていた。


 がばっと篠田に襟元をつかまれる。


「(ナナが好きで、俺たち付き合ってるから諦めろ、ってあいつに言っちゃえばいいのよ!)」

 

 篠田が耳元で囁いた言葉ではっとした。

 なるほど。そういう・・・。

 まあ、小山が今回の事件の中心なので、彼女が言うのが本筋のようというか、小山が直接何かしら石谷に対してアクションを起こすべきなのかもしれないが、当の本人は長いつきまとい行為ですっかり萎縮してしまっているからなぁ。

 

 一人で行けなんてとても言えるわけない。

 彼女のことを心配する気持ちがあるなら俺がやはり赴くのが筋、ということになるだろうな。

 ああ、なんかすごく客観的な物言いをしている自分が時々嫌になる・・・。


「(それとも何?なんとも思っていないとか!?まさかそんなわけないわよね、すっごく仲よさそうだもの!ナナは本気みたいだよ、このまま何もないんじゃあの子かわいそう)」

 

 いつの間にか俺は篠田に部室の外に連れ出されていた。


「(はっきりさせて欲しいわよね。自分らも気になってるもの。ナナはね、お父さんも最近亡くなってお母さんと二人暮らし、家ではいつも一人だしすごい寂しい思いしてるんだよ。それにあんなど田舎でさ・・・小さい頃から面識はあったんでしょう?)」

 

 そうだ。

 

 俺と小山は、面識がある。

 数回、小学校の頃会った程度だ。

 祖父母の家、つまり俺の今の家に帰っていた頃、ご近所ということで若い子がいないからと遊ばせてくれたことがあった。

 

 だから、高校で初対面というわけではない。

 だがあまりに期間が開いているためにまるで初対面のように出会ってしまったが。


「(ナナは小山君が帰ってきてくれた、って嬉しそうに話してくれたことあったんだよ。ナナ、すごくいい子だよ。あんな可愛くて愛想のいい子いないよ!ちゃんと考えてあげてよ・・・頼む!)」

 

 怒られるのかと思った。

 いつもの調子でまくし立てられるのかと思ったが、篠田の声は穏やかな熱を帯びていた。

 親友を思う篠田の気持ちだろうか。


 小山が張り付いている鉄道や部活の問題を差し置いても、はっきりさせないと。 

 彼女が関わりあってる熱心な物事が終わってから対応を考えようとか思っていたけど。



 

 とか考えていたら。


「言ってきたわよ、石谷に直々に。休憩時間に。ナナと一緒に。『付き合ってる人がいるからもうやめてね』って」


「え」

 

 いつでも篠田の物言いは唐突だと思う。

 というか。

 今度は俺が恨みの対象でつきまとわれたりしないといいが・・・。

 いや、小山にさえ迷惑をかけてくれなければいいんだ。

 正直なところ。

 




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