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辺境高校生  作者: にしむらぱすた
【本編】
27/64

第25話 迎撃作戦

 小山がつけられている件については、皆に事情を説明した。

 

顧問の水谷先生立会いのもと、何か措置を、と考えていたら篠田が「こっちから迎え撃つわよ!」と彼女らしい反応が返ってきた。

 

「迎え撃つって、どうするの?」と高橋。「まさかみんなで囲んでたこ殴りって訳には・・・」

「いやいや、うん・・・どうしよう」


口にはしたものの具体的な作戦についてはまだ考えが及ばない様子の篠田。


「バスで通学してた頃は居なかったが、またどうも鉄道利用再開したあたりからついてきてるんだ」

 

俺が昨日の状況を説明する。


「早く教員にも言っておいてほしかったわね・・・とりあえず私も同行するわ」 

 

ミズタニンはチッ、と舌打ちする。

 もうなんか、全員で不審人物の追跡をやるみたいな流れになっているな。

 出現場所がおおよそわかるんだから、こちらからもつける、みたいな?

 ストーカーを尾行するストーカー、か?


「聞けばだいぶ前からそんな状況だそうじゃない?小山さんも早く相談して欲しかったわ」


「すいません先生」ぺこりと頭を下げる小山。


「夜回りでもするつもりで?」と俺。


「そうね、必要ならしないとね。本来は男性教諭の役割ではあるんだけど」


「とりあえずさ、俺今日竹刀持って帰るわ」


「蔵田の選択科目は柔道じゃなく剣道だったわね」と篠田。


「ヤバくなったらこいつでぶっ叩く」


「はは・・・通用する相手ならいいんだけど」


「高橋の意見に同意。相手は何持ってるかわからないしねぇ・・・刃物とか持ち歩いてたらサイアクじゃん」

 

 篠田が包丁でも構えるかのような挙動をする。

 小山は肩を震わせている。


「おいおい、小山怖がってるぞ篠田」


「・・・ごめんナナ!控えるわ」


「ううん、大丈夫」


「最近多いよね、事件ぽいこと」

 

 清川が呟く。


「そうよねぇ。『宮郷線を守る会』の一部の人らにも嫌がらせ電話とかきてるそうじゃない?もしかしてさぁ」

 

 篠田は先日会った、追川という男が関与していてひょっとするとこれらの事件が一つの線で結ばれる可能性を示唆したが、その追川と旧知であるらしい水谷教諭はそれを否定した。


「ストーカーはもっと前からでしょう?追川が小山さんをつける理由がわからないわ。嫌がらせだとしても。守る会メンバーの方とかは不審電話はあってもつけられたりとかいう報告はないようだしねぇ・・・」


「人によって対応を変えているということはないんですか?追川という男の取り巻きとか、あとアンチ存続派が噛んでるとか・・・」と高橋。


「うーんまあ、そうかもしれないけど。・・・まああれこれ考えるよりまず相手が一人なら追跡して追い詰めて素性を晒させるだけよ」

 

 随分水谷先生はワイルドな物言いだな。


「警察に言ったほうがいいですよね、これ」


「ああ、清川さん、通報したわよ。でもあんまりまともに取り合ってくれなかったわ」


「え、なんで!?」

 

 俺、高橋、篠田の声が重なる。


「『様子見ましょうか、』よ。頼りにならないわ」


「警察も忙しいんだよきっと。後をつけてるかもしれない、だけじゃ動いてくれないよね・・・はは」

 

 小山がやや寂しそうに笑う。


「実際そうなのよねぇ。前も『つけられてる』ってことでOLが宮川の警察署に通報したらしいんだけど、しつこく付きまとわれて怖い、というので張り込みしたら、たまたま帰路が一緒の男性が居たというだけだったとかいうオチでね。逆に話をした私が笑われてしまったわ」


「職務怠慢だろこれ・・・」

 

 俺が怒りの表情。


「まあ、怠慢ってわけじゃないんだろうけど。つきまとっている相手の正体が判明しているなら、警告を与えることができ、さらに従わなければ相応の措置を取る、ということらしいんだけど、正体もわからないわけだしねぇ」


「ストーカー規制法というのがあったと思いますが・・・」


「あったわね高橋君。まあでもあれはあれを用いて不審者を捕まえますみたいなことは書いてないみたいよ。あくまでもストーカーに対しては警察はこう動きます、みたいなマニュアルのようなもので不審者を片っ端からしょっぴいていくことを定めた法ではない」

 

 へえ。まさか先生も昔つけられたことがあるとか?いや、何か関わったことがあるのかもしれないな。


「身体の安全を脅かすような事例が発生したとか、行動の自由を著しく阻害したとかいう具体例がないと難しそうよ。まあ、それでも通報はしないとだけどね。いつ動いてくれるか解らないし」


「身体の安全を脅かされてからでは手遅れなんじゃないですか?」

 

 不安げに言う清川の言い分はもっともだ。


「事件性の薄いものにいちいち関与できないともとれそうだけど、私らにとっちゃ正直事件よね」

 

 篠田も不満そうだ。


「まあ、仕方ないかもな。あ、でも宮川の本部じゃなく須ノ郷の駐在に入ったら反応違うんじゃないか?割と暇そうだから相手してもらえるかも」


「暇そうとか言うと怒られるよ~」


「いやいや、小山、お前さんの身を案じてのことだぞ。いろいろやってみないと」


「そうね、その通り」とミズタニン。


「うん、ありがとう」



 

 そして実際、宮川市内の交番ではなく、俺や小山の地元の、須ノ郷の駐在さんに連絡を取ってみると、なんとこれが「わかりました、追跡しましょう」とのこと。

 部署によって全然対応が違うとは・・・。

 というか、派出所・交番と違って駐在所は地域在住の方がやってるから動いてくれたんだろうか。



「今から来られるらしいです」

 

 高橋と篠田が先に須ノ郷村の駐在所に行っててくれたのだが、携帯で聞いた内容をそのまま小山と水谷教諭に伝える。

 俺たちは今、七ヶ瀬駅に着いたばかりだ。

 

 清川も同行したがっていたが、今日は例のラーメン屋さんで家庭教師だそうだから、皆で「そっち優先したほうがいい、人数居るから」ということでとりあえず帰ってもらった。

 仲間はずれとかそんなんじゃないからな、清川。まあみんなわかってるはずだけど。

 

 先行する篠田、高橋はもう一本早い便で、次の駅である原平で降りて歩いて駐在に向かっていたはずだが、高橋いわく「電話で呼び出しをするより直接駐在に行って訴えたほうが動いてくれる可能性が高そう」とのことで、その通り功を奏した格好だ。ナイス。


「こんなにあっさり動いてくれるんなら、俺、竹刀持って帰るんじゃなかったな・・・邪魔だった」


「わからないわよ、それを使う場面があったりして。まあ、物騒なことにだけはならないよう願いたいとこだけど。こういうの、長引くとアレだから、ちゃっちゃとできれば今日、解決できるといいわね」


「まったくです、先生」


「で、どうなの?どうやって高橋君たちは来るの?」


「ああ、駐在所の人のパトカーで篠田と乗り合わせて・・・ん?あ、高橋からメールだ・・・駅から南側の道路の少し先でライト消して潜んでるそうです。道路沿いに歩いてきて欲しい、と」


「つけてくるかしら」


「今日来てたら、おそらく」


 思ったんだが、女性一人をつけまわす不審者というのが多い気がするが、俺らの場合は小山だけじゃなく俺がもう一人付いててもつけられる、というのがなんだかアレだな・・・。


「じゃあ私は少し時間差で後を追うから、先に出てちょうだいね」


「はい」

 

 俺と小山の声が重なる。

 並んで、駅の構内を出る。

 照明がなくなり、距離感覚の長い、心細い街路灯だけが夜道の頼りだ。

 というか田舎の夜って本当に暗いんだよな・・・まあ、大都市の夜は明るくても物騒だと誰かが言ってた気がするが。



「『来てるわ。少しあとのほう。振り返らないでいいから、そのまままっすぐ進んで』とのことだ」

 

 小声で小山に囁く。こくり、彼女は頷いたようだが暗がりでその表情はよくわからない。

 メールを送ってきたのはミズタニンだ。

 このまま直進すると、パトカーのある場所に出る。

 ライトもエンジンも、パトランプも勿論止まっている。

 路上駐車したまま真っ暗な車内だ。

 街路灯でうっすら車の輪郭が見えてきた。

 

 そして、通過。

 後方を間違いなく一人、誰か来ている。


 ガチャッ。バタン。

 車のドアが開いたり閉まったりする音が聞こえた。 

 ライトが点灯したので俺たちは振り返る。


「はい、君ストップ。ちょっといいかな、警察だけど」

 

 相手は無言だったがかなり驚いている様子だ。

 ぱたぱたと顧問も駆けてきた。


「はい、お疲れさん、中、替わってくれるかな」

 

 車内に居た高橋と篠田が出るよう促され、替わりにその不審者が車内に入ることに。


「今から質問するから答えてよ。あと、小山さんも聞くことあるからそのへんに居て。みなさんも」

 

 ガチャリと内側からロックを掛けられてその人物は出られない。


「学生なの・・・!?」

 

 篠田が驚いている。俺もそうだ。いや、皆もそうだ。


「ウチの生徒じゃん・・・!誰か知ってる?ナナは?」

 

 小山が「ええと・・・」と思い出しているということは、顔は知ってるがすぐに名前が思い出せないということか。


「隣のクラスの石谷じゃないかな?」と高橋。

「そう!その人だ!1年のときクラス一緒だった!」

 

 小山も思い出したようだ。




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