第13話 ご当地ヒーロー(2)
試験週間もとりあえず終わり、採点済みの答案を受け取ったのはついこのあいだ。
赤点で追試を受けるような事態に陥った者は部員にはいなかったので、落ち着いてゴールデンウィークに突入できる。
そしてその大型連休の初日。
件のヒーローショーが宮川駅前の広場で開催されているということで、その時間に合わせて駆けつけた。
周囲には人だかりが出来ているから、どのへんに行けばいいかはすぐわかる。
もともとイベントをするために存在している広場ではないのだが、昔から駅前で野菜市などをしていた名残で、駐車場やロータリーの一部ではない割と広いスペースが確保されている。
「よ、高橋」
「ん、蔵田。あれ?田植えの手伝いはどうしたの?大丈夫なの?」
肩を叩いた友人の顔はやや驚いた表情だ。
「ああ、学校行事ってことで抜けてきた。午前中は早くから手伝ってたけど」
「そうなんだ。学校行事ねえ・・・まあそういうことにしときますか」
ニコリ、相手は笑った。
「みんな来てるか?」
「うん、前のほうに居るよ。始まったばかり」
部員は来ているようだが直接的な部活、ではないよな、これは。
まあ、文化祭用のレポートの一部にするんなら部活と言えなくもない・・・と思ったら高橋はカメラ持ってきているし。
記事にするつもりかもしれないな、小山は。
人垣から覗いてみると、確かに女子部員ら3人らしい後姿が見える。
最前列のあたりで体育座りだ。
うおー、とか言いながら拳を突き上げて叫んでるのは小山か。
恥ずかしいヤツだな・・・。
地域の文化を守ろう!とかマイク片手に叫んでいるのは例の『ハニャワン』か。
源田町が誇る遺跡とその近くを走る宮郷線を守り、残していこう!とか言っている。
「グェッグエッグエッ・・・」
不気味な声とともに背後から何者かが現れる。
「なんだあれ」
「おそらくあれが土偶戦士『ドグゥーン』だよ」
高橋は部でこういう活動をするようになって以来、カテゴリ外の知識がどんどん身についていっているな・・・。
「ウガーーーーーーッ!!」
げしっ。
「ウォォォォ!」
いきなりハニャワンへ、突如出現した謎の生命体・ドグゥーンの足蹴り!
背中を蹴られて思わず地面に転がるハニャワン。
なんだ、いったいどうした。
「味方じゃないのか!?」
思わず俺も身を乗り出している。
「なっなにをするのだ ドグゥーン!」
「ガッガッガッ・・・オマエガ シッカリ カツドウシナイカラ コフンノ チメイドモ アガラズ カンコウキャク モ コナイイイ!」
八つ当たりかよ。
「私の・・・私のせいではない!私は、このふるさとを守るために日夜戦っている!」
「ナマヌルイイイイ!ゲンニ ゲンダチョウ ノ ジュウミンモ カナリヘリ カソカ ノ マチト イワレテシマッテイル・・・!アピールフソク デ カンコウモ カコウギミダ・・・!」
人のせいにするなっ。
「ミヤゴウセン モ イマヤ フウゼンノトモシビ・・・ ジュウミンモ マイカーリヨウ、バスリヨウ ノ ホウガ イイトイウ ソウデハナイカ! エンセンニ イナガラ コノ テイタラク! ナゼモット ウッタエナイノダ!」
自分も同じ沿線の古墳出身じゃないのか。
あと、マイカー利用者を悪く言うなよ・・・。
現にこの駅周辺に自家用車で来てる人もいるはずで。
「マイカー利用、バス利用は関係ない!田舎に暮らす者の足としていまや必要なものだ!だがしかし、列車にも乗ってもらいたい!」
どっちだよ!
いろいろ欲張りすぎの感。
しかしまあ、どうしたものか。
「チェリー・・・アローーーーー!!」
突如、何者かがまた現れた。
告知にないサプライズっぽい。
叫んだ何者かが放った矢が放物線を描いてドグゥーンの尻に当たった。
ピキュッと変な音がして、矢の先端の吸盤が身体にくっついた。
わはは、と周囲の子供達から笑い声。
「あれは・・・”桜守・チェリー・ブロッサー”!」
高橋はもうすっかり詳しくなってしまったな。
「なんなんだよそれ・・・」
「桜の名所が多い須ノ郷村を代表するヒーローだよ」
「知らないな・・・」
「同じ村出身なのに?」
「ああ」
そんな、普段どこで活動してるかもわからんヒーローの実態とか、地元もよそも把握してないって。ましてや俺の生活に関与してるわけじゃないし。
見ていればなんだか三つ巴の争いになってきた感じがしていたが、物語はクライマックスのようだ。
”なんとかアロー”が刺さったドグゥーンは怒りのストレスによって暴走していた心が鎮まり、「わ・・・わたしはいったい・・・」とか喋りだし、元の性格に戻った様子。
地域活性化運動があまりうまくいっていないと思い込み、イライラしやすい性分のお陰で荒くれ者になってしまっていたという設定らしい。
地域の自然を守るチェリー・ブロッサーは桜の名所を守る傍ら、自然のもたらすヒーリング・パワーで悪しきストレスを霧散させるエネルギーを秘めているらしい。
都会と違って田舎は癒しがありますよ、とかそういうアレが含まれてるんだろう。
よく考えたなこういうの。
新手の登場で一時はバトルロイヤルか!?と思われたがどうにか終幕の頃には大団円を迎えていた。
色々な思惑を巡ってギスギスしている自治体同士の関係のようにも思えたが、最後は理想の終わり方に持っていったような。
この沿線沿いには大切な遺跡や名所があるから今後ももっとアピールしていく、皆さんも協力お願いします!とか訴えつつ。
「おやくそくできる人ー!」
と3人のローカルヒーロー(?)がマイクで語りかけると、皆大人も子供も「はーい!」という威勢のよい声が返ってきた。
約束できる人にはサイン会、とか始まったし。
「見て見て!3人みんなにサインもらっちゃったよ!!」
俺たちの姿を見つけ、嬉々として戻ってきた小山にどう接したらよいものか。
色紙には『ドグゥーン!』とか殴り書きが・・・。
「かっこよかったねー!」
清川が小山と何か共有している。
「意外と迫力あったわー!」
篠田まで感銘受けてるとは・・・意外だ。
「はは、みんな楽しそうでよかったじゃない」
まあ、高橋の言うとおりかな・・・。




