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辺境高校生  作者: にしむらぱすた
【本編】
13/64

第11話 車内でお話し(3)

「ゆだる~ ゆだるです」

 

 誰がつけて、だれが呼んでいるのか定かでないメイプルロードを抜けると温泉で知られる集落が見えてくる。


「湯樽温泉・・・駅から徒歩10分か。近いな」

 

 停車した車窓からは温泉施設らしいものはよくわからなかったが、山のふもとというのは温泉があった

りするものだ。ということは寿法山(じゅほうざん)って休火山か?噴火したりしないでくれよ・・・。


「近いから列車で来る人もいるけど、最近はもっぱら自家用車が多いね・・・」


「残念なことだ。列車で来たら温泉割引、とかあればなあ」


「蔵田君、協議会メンバーか守る会スタッフにでもなったらいいのに!?」


「いや・・・それは遠慮しとこう、学業がおろそかになりそうだ」


「成績、よかったっけ」


「それは言わないでくれ・・・」


 地域について聞いたり調べたりする度に、ああ、惜しいなと思うことしきり。

 もっと沿線の施設や、鉄道会社や、住民らがうまく連携をとっていけてたら、もう少し鉄道利用者も増えているかもしれないのに。

 

 まあ、それが出来ないから、乗り手の減少に歯止めがかからないからこそ今の事態を招いているのだなあと、自分はまさにこの宮郷線に乗りながら思う。


「つかもり~つかもり~」

  

 相変わらず抑揚のない車掌の声が響く。


「塚森の大銀杏・・・県指定天然記念物、と」

 

 またパンフレットから読み上げる。


「一応、この位置からでも見えるらしいんだけど」


「どれ」


「見える?」


「見えない」


「ええと、あれだよ」


「ちっさ・・・」


「まあ、一応見えるというレベルだからね・・・実際は歩いて近くまで行ったほうが」


「小山は見たことあんの?」


「あるよ」


「ほう。して、どうでしたか」


「秋の落葉の時期がすごいね。こう、ぶわーっと、葉っぱが散って、舞って。黄色の絨毯(じゅうたん)が敷かれたみたいになって」


「ほうほう。ぶわーっとですかな」


「写真は撮ってるんだけど、今手元にはないね。家にある」




「思ったんだが、景色いい場所、線路沿いに結構あるよな。写真撮ってカレンダーとかできるんじゃ・・・」


「実は毎年作ってるのがあるよ」


 あるのか。


「ええと、地元の写真家さんだったと思うんだけど、いや、写真は仕事じゃなくて趣味だったかな・・・アマチュアの人だったかもしれないけど」


「ほう」


「その人が撮影した沿線の景色を収めた12枚つづりのカレンダーが発行されてる。ちなみにウチでもそれ使ってるよ。結構大きくて見やすいし」


「どこで売ってんの?」


「確か宮川市内の駅とか、あとは通信販売とかかな。私は宮川駅で買ったけど」


「撮影者個人の通信販売?書店とかには置いてないのか?」


「うーん、あったかなあ・・・どっかに委託されてるかもだけど、小部数だからねー。カレンダーはそのアマチュアの人が自費出版で出してるんだって」


「自腹で、フルカラーを?お金結構かかるんじゃ」


「みたいだねー。キヨちゃんが言うにはカラーのものって小部数発行だと1部あたりの値段が大部数に比べて2~3倍くらいかかるらしくて。でもきっと大部数だと小部数よりさらにお金はかかるはずで、お得になるといってもそうなると発行できる資金はないと思うし・・・」


「いくらするんだ?カレンダー1部」


「3000円かな」


「高っ!」


「でも聞いたとこによると、全部売れても少し赤字なんだって」


「なんだそれ。発行の度に赤字じゃやってられんだろ」


「でも好きでやってることだから大丈夫なんだって。喜んでくれる人がいるなら出したいって。守る会の人が前言ってた」


 風光明媚をウリにしてるカレンダーなら日本全国の有名なスポットを集めた、それこそ高名な写真家が撮影し、有名出版社を経て刊行される比較的安価なものが年末には出回るだろうから、郷土愛精神にあふれた地元民が大挙して、無名カメラマンが自費出版した比較的高価なカレンダーをわざわざ選ぶとは思いにくい。

 

 それこそ、購入してる小山らのほうが少数派だろう。

 これもまた、残念ポイントがやや高い一件だな・・・。

 まあ、好きな人が撮って、好きな者が買う。

 これでいいのかもしれないけど。



 列車は野部(のべ)駅、そして引地(ひきぢ)駅と進む。

 寿法山周辺を源流とする三登瀬(みとせ)川はその流域面積を徐々に広げている。

 その川に沿って線路は続いている。


 石倉(いしくら)駅に到着。

 このあたりからは宮川市だ。

 田舎の景色はだんだんと町の景色に変化していく。

 比留間(ひるま)駅に着くごろにはビルも目立つようになってきて、十日市(とおかいち)駅ではすっかり町の色になった。


「みやがわ~みやがわ~。間もなく終点、宮川です。お疲れ様でした。お荷物お忘れ物ございませんよう、ご注意ください。本日もご利用いただきましてありがとうございました」

 

 車掌のおそらく最後のアナウンスが途切れ、列車は4つあるホームのうちの3番線に滑り込んでいく。


「改めて、長い通学時間だった!」


「あはは!」

 

 ドアが開いて乗客は一斉に・・・いや、一斉にと言えるほど乗っているかは微妙だが・・・改札を目指す。

 

 宮川駅構内はそれなりに通勤通学客で混雑しているようだ。

 他の路線利用者が大半だろうけど。


 

 そして俺と小山はさらにその先の学校に向けて歩き出した。



 






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