表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境高校生  作者: にしむらぱすた
【本編】
11/64

第9話 車内でお話し(1)

 月曜日の朝を迎えた。


 週末も日曜も、部員の誰からも呼び出しなどはなかったから、皆つつがなく連休を終えたことだろう。

 一応携帯電話に着信がないか、メールはないか確認したが、それらしいものはないのだった。


 

 宮郷線一柳みやごうせんいちやなぎ駅。


 7時前後だから通勤通学の時間帯に違いない。

 久しぶりに駅の改札を抜ける。

 

 今朝は駅員が居ない。

 無人駅かと思えばたまに居たりするけど。

 最近はどうだか知らないが、無人駅から無人駅の区間を無銭乗車する輩もいたらしい。

 ただでさえ運賃収入が低いのにこういうことをされたらかなわんだろうな、と思いつつ、現在はどうなっているのやら。


 雲間から差し込んできた朝日がプラットホームを照らす。

 ホームの1番も2番も無い単線。

 徐々に大きな箱型の車両が接近してくる。

 視界いっぱいにそれが広がってきて、ゆるやかに列車が止まる。


 車内に入るとすぐに、見知った顔と遭遇した。

 そしてそれは、直ちにまくしたててきた。


「蔵田君オッスオッス!」

 

 随分嬉しそうだ。


「おはよー、小山」

 

 一両しかない車両では、どのドアから乗っても見つけられてしまうだろうな。


「改心したのかね?」

 

 俺が陣取った窓側の向かいの席に、少女は腰掛けてシシシ、と笑った。


「はあ?」


「いや、ずっとバスだったでしょ?」


「だなぁ」

 

 列車が動き出して、ぼんやり見ている窓の外の景色も流れはじめる。


「まあ、仮にも宮郷線存続を訴えようとしている立場に(くみ)してしまったからなあ」


「不本意ですか?」


「うんにゃ」


「ならよかった!」


 見ていれば、喋りながら小山は菓子パンをバッグから取り出しほおばっている。

 朝メシなのかもしれない。

 

 買い食いが好きな小山、というイメージが以前の街中散策で出来上がってしまっており、その印象を払拭することもなくやはり何かいつも口にしてそうな子・・・というのが俺の中で定着した。今まさに。


「ほんでね、むごっふ」

 

 そして食べながら喋ろうとしてモノが気管に入りかけ、むせてるとこなんて相変わらずだ。面白い子だ。


「いやいや、ご覧の通り、朝からそんなに混んでもいない。東京とか関東だとたくさんの客車を()いた電車がばんばん来ても超満員だというのにねー」

 

 まあ、こないだ俺も似たようなことを考えていたような。


「昼はガラガラだろうな、この路線」


「まったくどうしたものでしょう!」


「どうしたもんかな」


「よい案はないのでしょうか!」


「よい案ならもうだいぶ前から出してるんじゃないか?小山の活動とか聞いてるし、昨年はいろいろすごいことやってるみたいじゃないか」


「ほほう、してそれをどちらで?」


「なんか家でネット検索してたら『宮郷線活性化協議会』のサイト見つけてさ。『活動報告』っていうページにこれまでの経緯とか実施したイベントとか取り組みが結構くわしく出てたよ」


「おー。見つけたんだね。『守る会』のサイトは見た?」


「いや、まだだなそういえば」


「検索したらいいよ。こっちはもう今年の活動計画が出てるはず」


「さすがだな」

 

 いえいえ、と照れ笑いする小山。

 

 


 だべっていたら次の駅に到着した。


「まつなが~。まつながです」

 

 車掌のアナウンス。


「松長では誰も乗ってこないな」


「乗ってこないね」

 

 また列車が動き出す。


「松長は・・・どれどれ。小山&清川が作成参加の新パンフ見ると・・・『松長城跡』ね。松長駅から徒歩20分の小高い丘に、戦国武将・武田なにがしの・・・」


「歴史好きな人にはいいスポットだと思うよ。まあ、一般の人には城跡って言ったら天守閣とかあるもんだろ!って突っ込まれそうだけど」


「立派な天守閣のある城なんてそうそうあるもんじゃないだろ。中世は木を組んで作った砦みたいな山城が多かったそうだし。でっかい城郭を持つ城も、江戸時代に徳川の命令で『一国一城制』とか出て取り壊されたものも結構あるらしいし」


「お、歴史くわしいね!」


「いや、日本史の教科書出てるぞ・・・授業ではまだそこまで行ってないけど」


「だいぶ先まで予習しておられるとは・・・感心いたす!」


「いやいや、ちょっと面白そうだから時間ある時にパラパラめくってただけだけどなー」


「男子って、歴史好きな人多いよね」


「そうか?んー、ああ、そうかもなぁ」


「女子はそうでもないけど・・・いや、キヨちゃんは好きって言ってたかな」


「清川が?」


「うん。戦国武将はイケメンばっかりなんだって。で、かっこいいって」


「そりゃどういう見解だよ・・・見たことあるのかいな」


「んーとね、たぶんゲームの影響だと思う。『戦国BANANA』とかハマってるとか言ってたし・・・」


「・・・・・」

 

 まあ、基本的にはゲームっておそらく、イケメンや美少女ばかりなんだろうな。

 清川が絵を描くときに何かと影響は受けていそうな気がする。



「おわせ~。おわせです」

 

 車掌のアナウンス。


尾早稲(おわせ)・・・尾早稲古墳群、駅より徒歩20分・・・このパンフ、各駅で降車してもらって付近の名所に案内させようという意図がばればれだな」


「それでいいんだよ。だってそういうパンフレットなんだから。列車で観光に来てもらっていろんなとこで降りて欲しいってのは昔から要望に上がってたと思うよ」


「まだあまり知られていない、地域の魅力の掘り起こし・・・観光パンフとして配布することで地域外の人に広くアピールできる、と」


「まあ、簡単に言うとそういうことだね。これまでの観光案内パンフはどっちかっていうと沿線から外れたとこが多かったからね~。路線を利用してもらうには、その付近の名所をピックアップしなきゃあね」


「だろうな」








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ