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余命宣告を乗り越えた幼馴染の愛が重い  作者: ミソネタ・ドザえもん
第三章

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7.冷やかし

 ルンルン気分の奏との登校は、小学生低学年、奏が病気により入院生活を余儀なくされる前の日々を思い出せて、とても楽しかった。

 

「こうやって一緒に登校していると、端から見たら恋人に見えたりするのかな?」


 ただ、奏のしょうもな……女子高生特有の色恋思考の質問には少しだけ辟易とする気分だった。


「見えるわけないでしょ」

「えー、なんでそんな断言出来るの?」

「……君と俺の容姿を見比べて、恋人だと思う人はそうはいないからさ」


 人間というものは、身の丈にあったものを見つける生き物なのだ。

 奏という完璧な人間の隣に、俺という欠陥だらけの男は相応しくない。


「そんなことないよ。あっくんはとても素敵だよ」


 どうやら奏は、俺の説が不服らしい。


「……心理学の分野だけど、単純接触効果というものがあるらしい」


 とりあえず俺は、自らの持っている知識をひけらかすことにした。


「それがどんな効果かと言うと、特定の人間と繰り返し接触……つまりは、会ったり、会話をしたりを繰り返していくことで、相手に対する好感度が増していき、相手の容姿さえもよく見えてくる現象のことだよ」

「……それが?」

「君が俺を過大評価するに至った理由は、まさしくその現象のせいだ」

「ふうん」


 奏はあまり興味なさそうに見えた。


「あっくん。多分だけど、それは間違っているよ」


 いや、どうやら興味はあったらしい。ただ、俺の説にやっぱり不服だっただけみたいだ。

 

「……何故?」

「だってあたし達、繰り返し会ってないじゃない」


 ……確かに。


「数年ぶりの再会だもんね。運命的な」


 どうして倒置法を用いたのかは、よくわからない。


「まあとりあえず、あっくんはとても素敵な男性だよ?」

「はいはい」

「……いや、でも、それを皆に気付かれたくはないかもなぁ」

「どうして?」

「……ふふ。どうしてだと思う?」


 知らん。

 そんな会話をしている内に、俺達は学校に到着した。


「……えぇと」

「下駄箱はこっちだよ」


 まだ一度しか校舎に足を運んでいない奏は、どちらに行けばいいかわからなくなってしまったようだ。

 俺は道案内も兼ねて、教室までの道を先導することにした。


「ありがと」

「こんなことしか出来ないけれど」

「そんなことない。いつも助けてもらってばかりだよ」


 ……そんなことはない。

 廊下、俺と奏は、隣同士、歩調を合わせて歩いていた。


 時折、隣にいる奏からの視線が、頬に刺さる。不快感はなかった。羞恥心は少しあった。


 ……早く教室に着いてほしいような、そうじゃないような。


「おはよーっ」


 特に早くも遅くもない、いつも通りの移動速度で、俺達は教室に到着した。

 元気な奏の声を聞き……。


「あ……っ」


 クラスメイト達は、教室の扉の前に立ち竦む俺達に向けて熱視線を寄越した。


「……ね。意外だよね」

「本当、本当……」


 折角、奏がクラスメイトと馴染むために活発な挨拶をしたのに。

 クラスメイト達は返事をせず、ヒソヒソ話に熱中していた。


 ……今更だが、クラスメイト達の熱視線は、好奇の視線の類だった。

 その好奇の視線を向けている相手は、まさしく俺達二人だった。


 ……嫌な雰囲気だな。

 矢面に立たされるだけで気分が悪いのに、噂話の対象にされたとなれば、気分は一層悪くなる。


「……おはよ、一ノ瀬さん」


 噂話に熱中していた一人の女子……門倉さんが好奇の視線を向けたまま、俺達の前にやってきた。

 彼女の見せている好奇の視線は……どこか俺達を嘲笑するような感情が見え隠れしていた。




「ねえ、二人って付き合ってるの?」




 ……俺は思わず、登校時に奏とした話を思い出した。

 どうやら奏の言う通り、端から見たら俺達は……恋人に見えていたらしい。


 ……俺の口から、即答で否定するべきか?

 俺なんかと付き合っていると変な噂が流れたら、奏の今後の学生生活に影響しかねないし。


 いやでも、質問をされたのは奏だし……奏の口から答えないと、気の強そうな門倉さんが別の怒りをぶつけだすかもしれない。


 ……少しだけ奏の様子を見ようと、俺はチラリと奏の方へ目配せした。


「……ぅ」


 俺は口から変な声を出して、ギョッとした。

 奏は微笑んでいた。

 

 相手が嘲笑目的であることは明白で、隣にいる俺は狼狽えている状況だと言うのに……まるで全てを意に介していないかのように、微笑んでいたのだ。


「……ど、どうなの?」


 その笑みから発せられる圧は強く、門倉さんは一歩後ずさっていた。


 ずっと微笑み、門倉さんの質問に答えなかった奏だが……。


「うーん」


 ようやく口を開く気になったらしい。


「どっちだと思う?」

「え?」

「付き合っているように見える? あたし達」


 ……まさかの質問返し。

 門倉さんは面食らっていた。

 

「……付き合っていないと思う」


 しばらくして門倉さんは答えた。


「あなた達、全然釣り合ってないし」


 その答えを聞き、俺は思った。


 なら何故、付き合っているの、なんて質問をしたんだ?

 少しでも付き合っていると感じているからこそ、その質問は成立するわけで……そうじゃないなら、意地悪な人やなぁ、以外の感想が普通なら出てこない。


 つまり結果的に君、自らの浅ましさを晒しただけになってない?


 ……ま、深くツッコミはしないでやるけどな。


 実際、俺達は付き合っていないし。

 彼女が醜態を晒してくれたおかげで、奏の名誉は守られたわけだし。


 ……きっと、奏もこの展開を望んでいたに違いない。


 そう思って、俺は再び奏に目配せをして……。


「……あっそ」


 ……冷たい瞳で門倉さんを睨む奏を見て、俺は背筋に冷たい汗を滴らせた。

日間ジャンル別1位ありがとうございます!

とても嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
嗚呼、\(^o^)/オワタ
門倉さん逃げて、超逃げて! まぁ、あの質問したなら多少は付き合ってると思ってたって答えないとおかしなるよな。そう言っとけば機嫌よくなってくれただろうに……。
おいおい、こいつ死ぬぞ
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