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余命宣告を乗り越えた幼馴染の愛が重い  作者: ミソネタ・ドザえもん
第十一章

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57.罪悪感

 謝罪の後、高垣さんは何かを思い出したようだった。


「そっか。あなた達は……」


 そこまで呟いたものの、その先は何も言わなかった。代わりに気まずそうに顔を逸らした。


「うん。そうだよ」


 俺には高垣さんが何を言いたかったはわからなかったが、どうやら奏は理解したようだ。


「……そっか。そりゃあ、知り合いの悲報に感傷的な気分にもなるわよね」

「うふふ。そうかもね」


 ……俺は小首を傾げた。


「なら、余計に心配させてごめん。ただ安心して。ウチの弟はただ入院してるだけだから」


 高垣さんの言葉に……最悪の事態は回避出来たことへの安堵の気持ちが湧いてきた。

 しかし、すぐに安堵してもいけないことに気がついた。


 彼女の弟が、入院するまでに至る不幸に見舞われたことは間違いないのだから。


「……高垣さん、君の弟さんの身に、一体何があったの?」

「交通事故だよ」


 ……そういうことだったのか。


「ウチの家のそばの道がね、路肩が狭い上に車のすれ違いもままならないような場所なんだけど……結構車を飛ばす人も多いの」

「……」

「マンションとかが近くにあってさ。そういう場所に住む人って、地元のコミュニティ感では当たり前のルールを当然知らないじゃない? だから、そういう走行をしちゃう人が後を絶たなくてね」

「危ないね」

「……その上、あの日、あの時間はゲリラ豪雨で。ほら、この前集中豪雨で冠水とか話題になったじゃない」

「あったね」

「要は視界不良だったってわけ」


 ……高垣さんは俯いた。


「……弟が事故にあったって連絡を家で受けた時は、生きた心地がしなかった」


 ……。


「ただ幸いなことに怪我は足の骨折だけで済んだ。それで今は入院してるってわけね」

「……そう」

「……後言うべきことは、弟を轢いた相手はまだ見つかってないってことくらいかな」

「轢き逃げ、か……」

「……これが弟の身に起きた全容。本当、心配かけてごめんねっ」


 高垣さんは少しだけ明るさを取り戻したように見えた。


「あいつ、あの事故以降、すっかり元気をなくしてさ。で、入院中のベッドの上で見たニュースで件の飛行機が映って、見に行きたいな、と呟いたわけ。だから、ここは姉として、一肌脱ぐかーと思ったんだ」


 ……高垣さん、優しいお姉さんなんだな。


「……本当、ごめんね。ありがとう。おかげであいつの喜ぶ顔が見れそうだよ」


 高垣さんは優しい笑みを浮かべて、プリントしてきたラッピング飛行機を見ていた。

 足こそ骨折したが、高垣さんの弟は無事だった。


 後は治療に専念すれば、いつか高垣さんが言っていたように……かつての元気を取り戻すに違いない。


 彼女の様子を見て、俺はそう確信することが出来た。


 ……しかし。




「……ねえ、綾香ちゃん」




 ……どうやら奏は、違ったらしい。


「何?」

「本当にそれだけ?」

「……それだけだよ?」 


 高垣さんは苦笑した。


「あいつは交通事故に遭って骨折したから入院していて、元気がないからラッピング飛行機の写真を撮ってあげようと思った。……ただ、それだけ」

「……それはそうだね」


 奏は俯き、上目遣いに高垣さんを見た。


「……ただ、あなたが弟さんのために一肌脱ごうと思ったのは、本当にただ心配だったからってだけ?」


 高垣さんは驚いたように奏を見た。


「うーん。……うーーーん。なんだろう、これはあくまで、あたしの経験則なんだけど」


 奏は腕を組んで、続けた。


「……弟さんの怪我は骨折。今は元気がないけど、話を聞く限りは退院も時間の問題」

「……」

「でも、あなたはほぼ毎日のように病院にあししげく通っていて、今度は弟さんが見たいと言った飛行機の写真まで撮りに行った」

「…………」

「……あなた達姉弟の仲良し具合をあたしは知らないけど……少し重くないかな?」


 ……確かに、そうかもしれない。

 高垣さんには高垣さんの用事があるはずだし、病院に毎日通うのは……毎日通う程、時間を作るのは、かなり難しいはずだ。


 予定がないような幼少期の俺でさえ、奏の訪問へは週に一度しか行けなかったくらいなのだから。


「……あたし、毎日病院に通ってるなんて行った?」

「ううん。……まあ、そこはあたしの憶測でしかない」

「……そう、よね」

「ただ」


 奏は高垣さんを観察するように覗いていた。


「あなたの弟さんへの態度は、どこか姉弟間の絆以外の何かを感じる気がするの」

「……なにそれ」

「あたし、一度死にかけたから。……気丈に振る舞う人の顔を見すぎてね。なんとなくだけど、わかるんだ」


 確かに、奏は以前、幼少期の俺が病魔に侵された彼女と会った時、悲痛そうな顔をしていたことを読み取っていた。

 間近で見ていた奏の両親さえ気付かなかった、俺の些細な表情の変化を見逃さなかった。


「すごい……特殊能力だね」

「綾香ちゃん……」


 奏は、半信半疑なためか……俯いて続けた。


「あなたの顔からなんとなくだけど、罪悪感みたいなものを感じるんだ」


 ……罪悪感、か。


「……綾香ちゃん、あなたは本当に弟が心配だから病院に通っているの?」

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― 新着の感想 ―
どうした急に 自分のせいで事故ったみたいな事情かな…
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