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余命宣告を乗り越えた幼馴染の愛が重い  作者: ミソネタ・ドザえもん
第六章

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24.矛盾

 奏と話していると、運命、という言葉の定義を考えたくなる。

 運命。

 俺が知っているその言葉の意味は、人間の意思を超えて、人間に起こる幸運や不運のことだ。


 しかし、今、彼女が語ってくれた生きることが出来た理由は……どこをどう切り抜いても、運命ではない。必然だ。

 生きるために治療に耐えて。

 生きるために栄養を補給して。

 生きるために必要な人材と巡り合った。必要な人材と巡り合えるまで、試行回数を稼いだ。


 それらが必然とは言わず、一体何だと言うのだ。

 しかも彼女は先程、スピリチュアルな考え方は嫌いだと語っていた。


 運命とは、スピリチュアルな一面も抱えた言葉だ。


 つまり、運命とは……彼女の嫌っている思想の一つなのだ。


 聡明な彼女であれば、自らの発言が矛盾だらけであることは理解しているに違いない。

 にも関わらず、彼女は……。奏は、どうして運命に固執するのか。


「奏……っ」

「そろそろ高垣さんへのプレゼントを買いに行こうか」


 彼女への質問は、高垣さんへのプレゼント購入という、今日のデートの当初の予定によりかき消された。


「……うん。行こうか」

「高垣さん、どんなものを渡したら喜ぶかな?」

「なんでも喜ぶと思うよ?」


 俺達は再び電車に乗り、電気街へ向かった。

 

「へえ、高垣さんってあんなに可愛いのに、サブカル系が好きなんだ」


 電気街へ来た理由は、以前一緒に勉強をしている時に、高垣さんから自身の趣味を教えてもらったことがあるため。


「うん。スマホの待ち受けは推しの写真だし、メッセージアプリのアカウント名は推しの名前×自分の名前らしい」

「へえ……高垣さん、きっと異性からすごい人気ありそうなのにね」


 ……奏、さっきからサブカル系の趣味に一切理解を示していないな。

 我が国では数年前から、多様性という言葉を武器に言論の弾圧が進んでいるのに……なんだか新鮮な感覚だ。


「時々、コスプレしてるみたいで、この前は写真を見せてもらった。とても似合ってたよ」

「へーーーーーーーーーー」


 長い『へー』を頂きました。


「あっくん、コスプレしている女の子を見るのが好きなの?」

「いや別に。ただ見せられたから見ただけだよ」

「へーーーーーーーーーーーーーーーーーー」


 もっと長い『へー』を頂きました。

 

「とにかくそういうわけで、きっと推しのアニメグッズを買って渡してあげれば、彼女も喜ぶんじゃないかな?」

「でも、推しのグッズって自分で手に入れたくなるものじゃないのかな?」


 おおう、急に正論パンチ。

 サブカルな趣味に理解があるのかないのか。これもうわからねえな。


「……まあ、じゃあ、とりあえずお店に行ってから決めようか」

 

 電気街のある駅に電車が到着したため、とりあえず俺達は駅から出てプレゼントの吟味をしてみることにした。


「……すごい人だかりだね」


 電気街のある駅は、改札を出る前、駅構内を歩いている段階で、既にたくさんの人で溢れていた。


「迷子になれないね」

「うん」


 頷きながら、俺は奏の手を握った。中々にスムーズな所作だったと我ながら感嘆。

 俺達は改札を出た。

 改札を出ると、目の前の商業施設の一階にシュークリーム屋があり、香ばしい匂いが食欲をそそった。


「あっくんって、甘いもの好きなの?」

「うん。好きだよ」

「わかった」


 ……ここは普通、そうなんだ、じゃないか?

 商業施設を抜けると、目の前にはゲームセンター。

 右に曲がってまっすぐ歩くと、テレビでも見たことがあるような有名なアニメグッズショップがたくさん立ち並んでいた。


「あっくんはこの街にはよく来るの?」

「うーん。あんまり。人が多い場所が好きじゃないんだ」

「あはは。あっくんらしいね」


 ……そろそろ手を離してもいいな。

 俺は奏の左手を握っていた右手を開いた。


 ……が、奏が俺の右手を握っていたため、手は離れなかった。


 どうして?

 そう思って、訝しげに奏を見るが……奏は電気街のお店の様子が物珍しいのか、気に留めている様子はない。


 ……渋々、俺は奏の手を再び握った。


「あ、あのお店とか入店だけですごい行列だし、色々見れそうじゃない?」

「そうだね」


 俺達は手頃なお店に足を運んでみることにした。

 ……適当に入ったお店は、それこそデパートみたいな作りになっていて、十階程のビル内にいくつかの店舗が出店し、ブース内で商売をしているような感じだった。

 俺達はビル内の三階に降りてみた。


「……うわあ、フィギュアにポスターにDVD。色々あるね」

「そうだね」

「……あっくん。あたし、これ昔見たことあるよ」

「あー、俺もある」


 ……懐かしさに興奮してしまったが、高垣さんへのプレゼントというここに来た理由を忘れてはいない。

 

「これ、買おうかな」


 いや、奏は忘れていそうだな。


「奏、まずは値段見た方がいいよ」

「え? た、高いっ」

「……それを買うのは、また今度にした方がいいかもね」

「そうだね……」


 そんな一幕を過ごしながら、俺達はビル内のお店を物色し、最終的には高垣さんの推しのグッズを購入することにした。


「うふふ。値段は結構リーズナブルだったし、これなら高垣さんも負担には思わないよね?」

「そうだね」


 プレゼントを買えた以上、この街にこれ以上、長居する必要はない。


「それじゃあ、帰ろうか」

「えー?」


 奏は不貞腐れたように唇を尖らせた。


「もう少しこの辺、色々見て行こうよ。折角だしさ」

「……まあ、君がそう言うのであれば」

「やった」


 奏の気持ちを汲んで、俺達は電気街をもう少し見て回ることにした。

 一旦、俺達は駅の方へ戻り、反対側の出口の方へと進んでみることにした。


 電気街と反対の出口は……サブカル発祥の地という電気街のイメージとは少し異なり、オフィスビル等も建っていた。


「少し歩くだけで景色も変わる、良い街だねっ」


 奏の下した評価には、全面的に同意だった。

 最早観光気分で、俺達は電気街を散策した。


 時折、クレープを食べ合ったり、穏やかな時間を過ごしていた。


 ……そんな穏やかな時間を過ごしていると、ふと、河川に架かる橋の上で奏と交わした会話が脳裏をよぎった。

 結局、その後に流れてしまって……奏に、『運命』について尋ねることが出来ていなかったのだ。


「ねえ、かな……っ」

「あれー? もしかして敦君?」


 奏に声をかけようとした途端、遠くから俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。

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― 新着の感想 ―
スピチュアルなことは嫌いというのに運命という言葉を使うという大事な事を聞こうとすると邪魔が入りますね。
大丈夫? あっくんの不用意な言動で増えていく奏さんの謎ゲージが一定ラインを超えると何故か何も悪くない高垣さんの身に危険が及んだりしない?
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