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余命宣告を乗り越えた幼馴染の愛が重い  作者: ミソネタ・ドザえもん
第五章

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16.鈍感

 早朝、いつもよりも少しだけ早い時間に目を覚ました。

 昨日は遅くまで空港で奏と遊んでいたから、もしかしたら朝、疲労から起きれないかもと心配していたが、どうやらそれは徒労に終わったようだ。


「良い朝だ」


 むしろ、朝の体調はいつもよりも良い。

 あれだけ精力的に動いた翌日なのに、一切の疲労……どころか、全身にパッションが溢れているその理由を考えてみると、自ずと答えは一つに絞られた。


「……これも奏のおかげだな」


 昨日の空港での奏との会話。

 そして何より、帰りの電車の中での奏との会話。


 一昨日までの俺は、目標を一日でも早く達成させたい。そんな意識が先行するばかりで、焦りが生じて、視界が随分と狭まっていた。


 ……でも、一夜明けた今は、その気持ちにも微妙な変化が生じていた。


 目標を一日でも早く達成させたい、という気持ちに変化が生じたわけではない。

 目標を下方修正し、楽をしようという気持ちが芽生えたわけでもない。


 ただ、数年単位で抱き続けて、気付けば錆び始めていた目標達成のためのモチベーションが、昨日の奏との会話のおかげで再更新出来た。

 どうして俺が、医師を志すようになったのか。それを再認識することが出来た。


 それが、気持ちの持ちように大きく影響を与えていることは明白だった。


「あとで奏にお礼を言おう」


 学校か……はたまた、最近の流れなら駅で会えるだろうか。

 とにかく早く、奏にお礼を言いたい。


「おはよう」


 逸る気持ちを抑えながら、俺はリビングへ。


「おはよう。あっくん」


 そして、我が家のリビングにて……奏は母の振舞ってくれた朝食を食べていた。


「いやあ、今日は良い朝だね」

「……」

「あっくん?」

「会いたかったよ、奏」

「……えっ」

「えっ」


 おかしい。

 俺は素直な胸中を語っただけなのに、奏……ついでに母が、目を丸くして俺を見ている。


「どうしたの? 二人とも」

「……あんた」

「……あ、あっくん。あたしに会いたかったの?」


 困惑気味の奏に尋ねられた。


「ん? うん。会いたかったよ。一分一秒でも早くね」

「……そ、そうなんだ」

「はー。お熱いこと」


 奏は焼きたてのパンを持ったまま、顔を俯かせて、モジモジとしていた。


「奏、どうかした?」

「え?」

「ずっと俯いてばかりで、なんだか具合が悪そうだから」

「……うぇぇ」


 俺は奏に近づいて、額に触れてみた。

 途端、奏の顔がみるみると真っ赤に染まっていく。


「……熱はなさそうだね」


 しかし、顔の赤さとは裏腹に、額の温度はそこまででもなかった。

 何なら少しひんやりとしていて気持ちよいくらいだ。


「……あ、あっくん。ここじゃ恥ずかしいから、学校に行かない?」

「え? ああ、そうだね」

「じゃ、じゃあ、おばさん。行ってきます」

「行ってきます」


 母はうんざりげな顔を見せるばかりで、俺達の挨拶に返事はくれなかった。

 駅までの道中、しばらくの間、奏は俯いたままだった。

 

 奏、本当に具合、大丈夫なのだろうか?

 不安が募るばかりだった。


「……あっくん」


 駅舎が見えてきた頃に、奏が声をかけてきた。


「何?」

「……その。さっき言っていたこと、本当?」

「……さっき?」

「あたしと一分一秒でも早く会いたかったって言っていたよね?」


 奏の声のトーンが、少し下がった気がした。


「あたしも……あっくんに会いたかった。会いたくて会いたくて。あっくんが寝ている間に、勝手に家にお邪魔しちゃった」

「そうだったんだ」

「うん。……あっくんの傍を、離れたくないの」


 奏が歩調を早めて、俺に急接近してきた。


「あっくんは、あたしの傍にずっといてくれるよね?」


 そして、瞳の光沢を消して、俺に尋ねてきた。


「いや、ずっとは無理だよ。あははっ」


 俺は笑った。

 奏の奴、中々面白い冗談を言うものだ。


 だって、ずっと一緒にいたいだなんて……文字通りの意味なら、俺達の手首を手錠で繋いだりしないと成しえないことだぞ?

 そうなったら日常生活だって苦労が絶えなくなるだろう。


 奏は笑っていなかった。


「……今度は、俺の話を聞いてくれる?」


 俺は本題に入ることにした。


「さっき言ったじゃないか。君に早く会いたかったって」

「……」

「……ありがとう」

「……」

「ありがとう。奏」


 俺は頭を下げた。


「君のおかげで俺、まだもう少し頑張れそうだから」

「……」

「本音を言えば、少しだけ心がくじけてしまいそうだったんだ」

「……!」

「でも……君が俺に再確認させてくれたんだ。どうして俺が、医師を目指したいと思ったか」

「……?」

「多分俺は、君がいないともう駄目なんだと思う」

「……ぇ」

「だから、ずっとは無理だけど、なるべく一緒にいてくれると俺も嬉しい」


 ……しばらくの沈黙。


「も、もうっ。あっくんは仕方がないなあっ!」


 沈黙の後、奏は上機嫌にスキップを始めた。

やっとサイコホラー展開から脱却出来る時が来たと思ったんだが、もしかしたらこれも一種のサイコホラーかもしれない。怖い。

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― 新着の感想 ―
ポンコツ激重サイコホラーでいいんじゃないかな、絶妙なコミュニケーションのずれがあるのになんかうまく行ってるし。
狂人カップルかな?
お似合いだよ君たち
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