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余命宣告を乗り越えた幼馴染の愛が重い  作者: ミソネタ・ドザえもん
第四章

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13.嬉しそうなヤンデレ

 悶々とした気持ちを抱えながらの午後の授業は、全然集中することが出来なかった。

 集中出来ない授業は、大抵がいつもより時間の流れを遅く感じるものなのだが……今日はどういうわけか、いつもよりも早く、あっという間に時間が過ぎ去った気がした。


 放課後、帰りのショートホームルームが終わったばかりの教室は、まだ騒がしい。


 奏の周りにはたくさんのクラスメイトが集っている。

 彼女が転校してきてから、たった数日でお馴染みとなった光景。


「奏」


 これまで、ただの一度も、あの群衆をかき分けて奏に声をかけようと思ったことがなかった俺だが、今日だけは例外だった。


「行こう」

「……うん」


 今日の放課後、俺は奏にお出掛けの約束を取り付けていたのだ。


 静まり返るクラスメイト達を放って、俺達はさっさと学校を後にした。


 通学路。

 幾人かの生徒の間をすり抜けて、いつもより早足で駅へと向かった。


「……」


 その間、俺達の間に会話はない。

 彼女と再会を果たしてから、無言で移動したこともまた、一度もない。

 今日はなんだか、初めての経験が多い日だった。


「間に合った」


 改札を過ぎたタイミングで到着した電車に飛び乗ると、俺は安堵のため息を吐いていた。


「あっくん……それで、今日はどこに行くの?」

「……着いてから説明するよ」


 電車の中でも、俺達の間に会話はなかった。

 学生やサラリーマンの会話を断片的に聞きながら、移動時間の暇を潰した。


 減速する車内、不意に俺は立ち上がった。


「乗り換えだ」


 地下鉄に乗り換えて、それからまたしばらく、俺達は電車に揺られた。

 長らく電車に揺られていたせいか、奏は俺の肩に頭を乗せて眠ってしまっていた。


 ……乗客の客層は、学校最寄り駅で乗った電車とは、随分と変わった。

 学校最寄り駅で電車に乗車していた乗客は、サラリーマンや学生等、恐らく通勤、通学目的で電車を利用している層がメインだったが……。


 今、俺達が乗っている電車は、スーツケースを持った外国人が随分と多いのだ。


「……奏、そろそろ着くよ」

「ん」


 奏を起こして、俺達は電車を降りた。

 降りた駅は……地下駅で、区画は広め。そして、ここで電車を降りる客は多いが、電車に乗り込む客は皆無と言っても過言ではなかった。


「ここって……」

「空港駅だよ」


 俺が今日、奏を連れてきたのは、都内にある国際空港。




 そして、ここはかつて海外に旅立つ奏を見送った場所でもある。




「……改札を出ようか」


 俺は奏を先導して、駅を出た。

 地下通路を歩き、エスカレーターに乗って、向かった先は展望デッキ。


 ここもかつて、空へと旅立っていった奏を見送った場所だ。


「……何か飲む?」

「うん」


 俺達は自動販売機へ行った。

 そして、俺は奏に冷たいお茶を買ってあげた。


 屋外の展望デッキは、間近に滑走路があることもあり、大小さまざまな飛行機を眺めることが出来る。


「……あっくん。もしかしてここにはよく来るの?」


 ベンチに腰掛けた際に、奏に尋ねられた。


「どうして?」

「……なんというか、少なくとも初めて来たって感じではないから」

「……あはは。お見通しだね」


 俺は笑って続けた。


「うん。よく来るよ」


 ……本来であればこの場所は、奏との別れを象徴する辛い場所。

 でも、ある種そういう場所だからこそ、俺はここに通い詰めるようになったのだ。


「……ここは君と別れた場所だから。ここに来れば、もしかしたら偶然、君と再会出来るんじゃないかって、子供心に思ったんだ」


 幸い、自宅からここへは電車で一時間くらい。

 月一のお小遣いを全額ベットすれば、月に五回はここへ来れた。

 だから、一人での遠出禁止を親に言い渡されていた癖に、土日休みに親の目を盗んでは、勝手にここにやってきていた。


 そうして、何度も何度もここに通っている内に……気付けば、飛行機が好きになり、趣味としてもここに来るようになったのだ。


「……ま、結局ここで君と再会を果たすことは出来なかったんだけどね」


 俺は苦笑した。

 結局、再会を果たせたのは……全て、奏の頑張りのおかげだった。


 やっぱり俺の努力など、彼女の救いになるどころか……空回りばかりで成果になることの方が少ない始末。


「……どうして俺が、君をここに連れてきたかわかる?」


 奏は見当もつかないと言った様子だった。


「……君と別れたこの場所はさ、最初こそ因縁の場所で近寄りがたい場所だったけど、今となっては憩いの場となったんだ」


 滑走路に進入した一台の飛行機が、爆音を響かせ始めた。


「自分よりも大きな飛行機がたくさんの人を乗せて、空へ飛んでいく。飛行機に乗っている人は、どこに行くのか。何をするのか。そういうことに思いを馳せることが好きになった」


 爆音轟かせる飛行機は、一気に加速し……空へと飛び立った。

 ……かつては、空へと旅立つ飛行機を、天国への片道切符のようだと思ったことがあった。


 でもそれは間違いだった。

 俺がその間違いに気付いたのは、ここに通ったから。


 そして、今、俺の隣にいる彼女のおかげだ。


「……君のせいで、俺が辛いだなんて、とんでもない」


 俺は微笑んだ。


「君は俺に色々なことを与えてくれた」


 奏は何も言わない。


「勿論、良いことだけじゃなく悪いこともあった」


 次の飛行機が、滑走路を進んでいく。


「……でも、君が与えてくれた悪いことだって、最終的には俺の反骨心を育てる礎になってくれたんだ」


 飛行機が爆音を響かせ始めた……。


「……じゃあさ、あっくん」

「何?」

「どうしてあっくんは……いつも辛そうなの?」

「……そもそもが間違いだよ」

「……え?」

「人生なんてさ。辛いことばかりじゃないか」


 飛行機が空へと飛び立った。


「思い通りにならないし、悲劇も起きるし、苦しんでも報われないことばっかりだ」

「……」

「毎日辟易としてばかりさ。まあ、なるべく顔には出さないようにしているんだけど……君にはお見通しだったみたいだね」

「……うん」

「……本当に、生きていると苦しいことばかりが起きる。悲しいことにもね」

「……」

「でも、それと同じくらい、嬉しいことだってある」


 ……少し遠くの滑走路に、一台の飛行機が降り立った。




「俺の嬉しかったことはさ、他でもない……君との再会だよ」




 滑走路から、轟音が響いた……。

先日、羽田空港に行って、展望デッキからしばらくの間、数機の飛行機が飛び立つのを見送っていたんですよ。

滑走路は海が近く、丁度真冬だったので滅茶苦茶寒い上、天候は生憎の曇天模様。

なんでそんな日に飛行機を利用するわけでもないのに羽田に行って、ついでに展望デッキで飛行機を見てるんだろう、なんて思いながら、雲の中に消えていく飛行機を見送っている時、思ったんですよね。


これは小説のワンシーンのネタに使える……! と。


あとレストランとか土産屋も充実しているしデートとかにもいいなと思った。

でも俺にはデートする相手がいないから関係ない話だと気付いた。


世知辛いぜ……!

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― 新着の感想 ―
脳内BGM、平松愛理「青春のアルバム」で拝読しました 離陸して空に浮く瞬間、思い出になった〜♪
唐突に何か旅立つものを見たくなる時あるよね あっくんも大分重い
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