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余命宣告を乗り越えた幼馴染の愛が重い  作者: ミソネタ・ドザえもん
第四章

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11.破滅願望のある男

「奏ちゃんに出会って、あたし気付いた。あたしって、狭い世界で生きていたんだなって」


 朝のショートホームルームが始まる直前、門倉さんが奏を褒める旨の発言を内輪でしていた。

 昨日の朝、少なくても門倉さんは、奏に対してわかりやすい対抗意識を見せていた。

 そうでないと、クラスメイトもいる場所で、わざわざ俺を絡めて、彼女を貶めるような発言をする必要はなかったはずだ。


 ……それが、たった一日でこの変わりよう。


 奏の奴、本当に一体、門倉さんに何を吹き込んだんだ……?


「ねえ、奏」


 お昼休み、気になった俺は奏に話しかけた。

 高校入学後、この教室で誰かに自発的に話しかけるのは初めてのことだった。


「何? あっくん」

「……あの」

「教室であっくんから声をかけてくれるの、初めてだね」


 俺はぽかんとした。

 それは確かにそうなのだが……どうして彼女は、話の腰を折ってまでそんなことを言ってくるのだろうか。


「うふふ。今日はあっくんから話しかけてくれた記念日だね」


 ……何言ってんだ、この人?

 

「奏ちゃん! お昼食べに行こうよー」

「あ、うん」


 俺が困惑している内に、奏は門倉さん達に呼ばれてしまった。


「……あっくん」


 去り際、奏は俺の耳元で囁いてきた。


「話は後でゆっくりと……二人きりで、ね?」


 奏の囁きは、少しだけ煽情的な声色に聞こえた。

 とりあえず俺はお昼ご飯を食べた。

 しかし、奏が耳元で変なことを言ったためか。思考は上手く巡らなかった。


 ……こういう時は、雑念を払う意味でも勉強をするに限る。


 そう思った俺は、図書室へ足を運んだ。


「お疲れ様」


 俺はいつも通り、高垣さんの隣に腰を下ろした。


「ん」


 高垣さんは勉強に集中しているのか、生返事を返してきた。


「……」

「……」


 しばらく俺達は、騒がしい校舎を意識の外に置きながら、勉強に励んだ。


「……んー」


 お昼休み終了十分前くらいに、高垣さんが背中を伸ばした。

 ……こういう話をするべきか、しないべきか。


 高垣さんは自覚はなさそうだが、結構凶悪なものを持っている。

 つまり何が言いたいかと言うと、目のやり場に困る。


「……萩原君さ」


 俺はシャープペンシルを走らせていた。



「……あなた、一ノ瀬さんと付き合ってるの?」



 ……シャープペンシルを持つ手に力が入り、芯がポキッと折れた。


「その質問は、昨日門倉さんが奏にしていただろう?」


 つまり、答えを聞くまでもなく、高垣さんだって知っているはずなのだ。


「質問に質問で返さないでよ」

「……付き合ってない」


 俺はシャープペンシルのノブを二度押した。


「付き合っているように見えないだろ、俺達は」

「……いや、結構見えるけど」


 ……またシャープペンシルの芯を折ってしまった。


「……はぁ」

「うわ、わかりやすいため息。うざ」

「……君は俺達の一体何を見て、付き合っているだなんて思ったのさ」

「距離感」

「それは昔馴染みの関係だから、当然の話だよ」

「昔馴染みでもあなた達の距離感は近すぎると思うよ」

「あはは。高垣さんは面白いことを言うなぁ」

「……基本的には聡明な癖に、ところどころ抜けてるのよね、この男は」


 高垣さんは呆れた様子で頭を抱えていた。


「……まあ、あなた達が付き合っていないことはわかった。本人がそういうのであれば、そうなんでしょ」

「そうなんです」

「でも、一ノ瀬さん。あの子はあなたのこと、どう思っているの?」

「どうって……」


 ……奏と再会を果たしたのは二日前のことだった。

 再会以降、奏との時間は程々に過ごしてきたが……彼女が、俺のことをどう思っているか。


「……感謝、していると言っていた」


 数年前、奏は病魔に苦しみ、生死の境をさまよった。

 国内ではその病気を治すことは出来ず、彼女は海外に行き、治療に当たった。


 ……彼女が生きるか死ぬかのギリギリの世界を生きたことは、最早語るまでもない。

 そして、その事実は……彼女に激励の言葉を送った俺自身が感じていたことだった。


 俺は、かつての無力な自分が恨めしくて、憎くてたまらなかった。

 

 だけど奏は、そんな俺の存在に励まされていた、と言っていた。

 だから、命を繋ぎ、再会を果たした時に、俺に感謝の言葉をくれたのだ。


「……良かったね。感謝してもらえて」

「……良くないよ」


 だって、何度も言うが……結局俺は励ますことしか出来なかったんだ。

 奏のピンチに……何も成すことが出来なかったのだ。


「ストイックなあなたのことは放っておいて、客観的に一ノ瀬さんを見ているとさ。あなたに随分と肩入れしているように見える」


 本題はここから、と言いたげに、高垣さんは続けた。


「……昨日の今日での、門倉さんの心変わりの仕方がまさしくそれよ。何あれ。めっちゃ怖いんだけど」

「まあ確かに」


 門倉さんの変貌ぶりには、少しだけ面食らう部分もあった。


「……他の子ならともかく、あれだけ気が強い門倉さんがあんなんになるとは。恐ろしい子ね、一ノ瀬さん」

「あはは。まあ、底知れない部分はあるよね」

「えぇ、この人、なんで笑ってられるの?」


 高垣さんは引いていた。

 

「……まあ、あなた破滅願望みたいなのありそうだもんね」

「そんなことは」

「なら、もう少し楽しそうに学校生活を過ごしたらどうなの?」


 ……似たようなことを奏にも言われたな。

 そんなに苦しそうに学校生活を送っているのだろうか、俺は。


「……考えてみるよ」


 自覚はない。

 だけど、この学校での俺の数少ない友人二人がそういうのなら、少し考えなおした方がいいのだろう。


 ……ただ、考え直すと言っても、どうやったら学校生活は楽しくなるのだろう?


 これまで学校生活を楽しもうと思ったことなんてなかったから……わからない。


「ねえ、高垣さん。学校生活って、どうやって楽しんだらいいの?」

「知らないわよ。あたし、勉強で忙しいし」

「なんて無責任」

「……ちっ。学年一位様は良いわよね。学校生活を楽しもうなんて余裕があって」

「君が楽しめって言ったんじゃん……?」

「あー。あー。知らない知らない。可愛い可愛い幼馴染の一ノ瀬さんに教えてもらったら?」


「あたしのこと呼んだ?」


「ぴぎゃあっ!」


 ヌルっと登場してきた奏に、高垣さんは飛び上がった。


「うふふ。あたしのこと呼んだ?」

「あうぅ……」


 ……高垣さんは、何故か半泣きだった。

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― 新着の感想 ―
いやいや、ヌルっと登場するな!美少女ヒロインが使っていい擬音じゃないッ!
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