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”鬼姫”と呼ばれたあたしが気弱な貴族令嬢に転生。ムカつく婚約者を気絶させた結果、何故か執着されてます。  作者: seika


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転生から数日経過

 あたしは、この生活にはまだ慣れない。


 だけど――。


「んー、今日のデザートは格別だな! 明日はいちごタルトが食べたい!!」


「ふふ、かしこまりました。お嬢様がこんなに甘いものをお召し上がりになられるとは……以前は体型が変わるからと、あんなに拒まれていましたのに」


「ま、まあ、甘いものは別腹だからな!」


 あたしの返しにメイドのルーシィは不思議そうな顔をしていた。どうやら「デザートは別腹」という単語は存在しないみたいだ。


「ミリア様、本日のお手紙でございます」


 兄のメイドがあたし宛の手紙を持ってきた。


 家にはあたしと兄の専属メイド合わせて五人、執事一人、料理人二人。この広い屋敷に10人くらいで住んでいる。多いのか少ないのかは分からないが、家族じゃない奴らと生活しているなんて変な感じだ。まあ、ミリアが生まれた時から一緒にいるんだから家族みたいなものか?


 そんなことをぼんやり考えながら、メイドが両手一杯に抱えた手紙に目をやる。今日も大量だな。手紙の中身は舞踏会の招待状や誕生日パーティーの案内など、くだらないことばかりだ。しかも、ミリアが毒殺されそうになったという誤った噂が広まったせいで、それを確かめたい記者からの手紙が途切れることなく届いた。


「全部断っといて〜」


「は、はい……あと、ルーカス様から本日もお手紙が届いております」


 ちっ、またか。あの弱っちい婚約者から手紙が毎日届く。どうせ会って話したいって内容だ。決闘なら受けて立つが、この世界でそんなことをしたら目立ってしゃーない。兄からも当分は大人しくするように言われている。だから、こいつの手紙はいつも通り無視だ。


 そして、兄から仕入れた情報によると、ここは日本でも外国でもないらしい。スマホやネットがないから調べられないが、どうやら”アルテーン王国”という国みたいだ。住民は貴族、平民、騎士の大きく三つに分類されていて、あたしは貴族令嬢という身分らしい。


 国王→公爵→侯爵→伯爵→子爵→男爵→騎士……ざっとした階級はこんな感じらしい。学校でいうカースト上位の厳しめ版だと理解した。目上の人に対するマナーとかめんどくさい決まりもあるらしい。つまり、ルーカスは伯爵家、あたしは男爵家。殴ったら面倒くさいらしい。何らかの処罰があるかもと釘まで刺された。


 その話を一通り聞いて思った。

 やはり自分はこの世界に転生してしまったのだと。


 こんなことになるなら、アニメとか漫画で流行っている令嬢ものや転生ものを見ておけばよかった。スポーツとか不良ものしか見てこなかったツケが回ってきてしまった……なんて考えても仕方ない。本当に転生するなんて普通は思わないじゃないか。


「みっ、ミリア!!」


 ドタバタと転びそうな勢いで兄が走ってきた。いつも騒がしい。


「なんだ? 大人しくしてるぞ?」


 椅子の上でダラーっとしていたので、のっそりと体制を整えた。


「ちっ違うんだよ!! ルーカス様が! ミリアに会いに来たんだよ!!」


「うげ……とうとう乗り込んできたか」


「どうしよう! 婚約破棄だったら、この家は終わりだ〜!」


 頭を抱えてる兄、カルモ・ヴァルディス。

 両親は数年前、流行り病で亡くなったらしい。それからは、まだ18歳の兄がヴァルディス男爵家の当主だそうだ。


 この若さで家を支えているのは称賛するが、そのせいであたしは婚約をやめられないらしい。ルーカスの家は広大な土地を所有しており、金銭的な援助も受けているとか。その説明をされたときは兄も殴ろうかと思った。


 だが、兄なりに両親から受け継いだ家を守ろうと必死なんだから責められない。夜遅くまで仕事をしている姿を知ってしまったからな。



「ミリア! ミリアってば!!」


「あ、すまん」


「どっ、どうすれば……」


 あわあわと慌てていて、当主らしくもない。どっしり構えないとな。

 あたしが手本を見せてやろう。


「とりあえず、来てるんなら会うしかないだろ」

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