第9話 爆誕! オネエ神官!
買い物を済ませて、アドンとサムソンが使っている宿屋に戻ってきた。
その足で宿屋の主に交渉して、厨房を使わせてもらうことに。
米ダンジョンがあると聞いていたから、あるだろうと思って出かけたら、予想通り市場に米が売っていた。もち米もあった。ダンジョン万歳!
まずは、あんこを作る。
小豆は最初に、水からゆでてゆで汁をこぼす作業をする。この工程は「渋きり」と言って、小豆の渋味や雑味を取り除く作業だ。水の量が少なかったり、時間が短かったりすると、妙に渋い味に仕上がってしまう。
あんこの調理工程はただ煮るだけだが、アクが絶えず出てくるのでこまめに取り除くことが大切だ。また、水分が蒸発しやすいので、水加減も常にひたひたになるよう注意を払う必要がある。放ったらかしにせず、定期的に鍋の状態を見るようにすれば、雑味や加熱ムラのないおいしいあんこに仕上がるはず。
砂糖を加えるタイミングが早すぎた場合、あんこが固くなってしまう。小豆がやわらかくなる前に砂糖を入れてしまうと、その後いくら加熱してもやわらかくなることはないのだ。必ず豆の芯がなくなるまで煮るのが肝心だ。
砂糖は甘さ控えめが好みの場合は小豆よりやや少ない量(※小豆300gに対して砂糖270g)に、甘みをしっかりつけたい場合は小豆と同量かそれ以上加えるといい。使用する砂糖の種類によって仕上がりの味が変わってくるので、いろいろ試してみたいところだが、とりあえず最も一般的に使われているという砂糖を買ってきた。
次は、もち米を炊く。
炊くといっても炊飯器はないので、鍋でやるか……と思ったら、幸運なことに蒸し器があった。使わない手はねェ。粒感のある、より本格的な仕上がりになるからな。まずはもち米を洗い、たっぷりの水に6時間~一晩浸水させる。浸水が短いと芯が残ってしまうが、そこまで長く待てないので「加速の罠」を使う。これは、たとえば毒状態などで1秒ごとにダメージを受けるときに掛かると、0.5秒ごとにダメージを受けるようになる。ただし毒の持続時間が半分になる。つまり時間加速の効果がある。これを10個重ねると、6時間が21秒に圧縮できる。
浸水後、ざるにあげてしっかりと水気を切る。ここでも「加速の罠」が活躍。水気が切れたら蒸し器に蒸し布を敷き、もち米を平らに入れる。鍋の湯が沸騰してから蒸し器をセットし、強火で約20~30分間蒸す。なお「加速の罠」が以下略。途中で一度、もち米の上下を返すように混ぜるとムラなく蒸し上がる。触ってみてふっくらと柔らかくなっていれば完成だ。
「見たことねぇ料理だな。味見にひとつ貰えねぇか?」
「大事な厨房を借りたんだ。嫌とは言えねェよ。
ほら、食ってみろ。飛ぶぞ」
「どれどれ……うッ――」
宿屋の主が、目をキラキラさせて俺を見る。尻尾があれば振っているだろう。
チワワやめろ。そういうのは足りてんだよ。
てことで、客室へ。
「アドン、差し入れ持ってき――」
「おかえりなさァい、ア・ニ・キ♪」
「――サムソン!?」
カツラかぶって化粧して、サムソンが女装していた。
くねくね動いて気持ち悪い! ゴツい男が何やってんだ!? ウインクすんな!
あと普通に顔が整ってるせいで、顔だけ見るとそこそこ可愛い!?
「ヤングソイの買取価格は残念だったわねェん? けど、落ち込んじゃダメよ?
兄貴にはアタシたちがついてるわ。気を取り直して次、頑張りましょっ」
「気を取り直すどころじゃねーよ!? テメエは正気を取り戻せ!」
「いやん♪ 元気になったァ♪ アタシ頑張った甲斐があるわァん!」
「やーめーろー!」
「ところで兄貴、アタシの女装ってけっこうイケてると思うんだけど、兄貴の感想聞かせてくれるゥ?」
「迫ってくんな! 離れろコノヤロー!」
「照れちゃってェん♪ 兄貴にも可愛いトコあるじゃない」
「照れてねェよ!? テメエの目は節穴かァ!?
バラン! お前もなんとか言えや! なんで止めねェんだ!?」
「いや、無理っす。絶対無理っす」
「兄貴ぃ~♪」
「なんでだよバラン!? 寄ってくんなサムソンてめえ!」
「サムソンがあんな覚悟ガンギマリの顔してるのは、初めて見たっす。
俺ァ自分の夢にも挫けそうになる根性無しだけど、仲間の覚悟を止めるほど甲斐性なしじゃあないつもりっすよ」
「なにィィィーッ!?」
「応援するっす。『仲間が苦しい時ァ、支えてやるのが役目』……兄貴の教えは守るっすよ」
「ん墓穴ゥゥゥ!? そして俺の苦しみは放置ィィィ!?」
「え……あっ、そうか……兄貴も仲間なんだし……うーん……難しいな……俺はどっちを応援したら……」
「兄貴♪ 兄貴♪」
「悩んでんじゃねー! バランてめー! サムソンてめえは黙れ!」
ちくしょーっ! どうしてこうなったァーッ!?




