第4話 チワワが2匹
「こちらが冒険者証です」
登録手続きが終わった。
そして差し出されたのは……どう見ても軍隊の認識票だな。つまり使い道も……。
俺も死なねーように気をつけねーとな。
特に「罠師」ってのは戦闘能力を「罠」に依存しているから、肉弾戦的な強さは低い。それを補うために、基礎ステータスが高い種族である「竜人」を選んだが……欠点を補うより長所を伸ばす設計にするべきだ、と他のプレーヤーからさんざん笑われたもんだ。くそっ、思い出しても腹が立つ。
会うやつ会うやつに言われまくるから、鬱陶しくて角を隠す装備を選ぶことにしたわけだが。この世界でも「なんで竜人が罠師?」と言われるに違いない。俺だってバランのやつに「料理人志望がなんで冒険者に?」と言いたくてたまんねェからな。角は隠して生きるに限る。能ある鷹は角を隠すっていうしな。……あれ? 角じゃなくて牙だっけ? まあ何でもいいや。
「よーし! それじゃあ、このままお前らのパーティーに入れてくれ!
これからみっちり案内してもらうんだ。その方が都合いいだろ」
「もちろん歓迎ですぜ。な? バラン」
「ああ、もちろんだ。
でも、サムソンでも無理な状態だった俺を治してくれたってことは、ツバキの兄貴は神官ですか? 神官にゃ見えねぇけど……」
「見えなくて悪かったな。いや、別に悪くねェけど。
俺は『罠師』だ。お前を治したのは『半回復の罠』ってスキルだよ。
本来俺の役回りは、敵の足止めと継続ダメージをばら撒くことだ。麻痺とか毒とかの罠でな」
「回復する罠? ツバキの兄貴、それってなんでわざわざ罠にするんで?」
「そうだよな……別に、普通に治しゃァいいのに」
「まあ基本的にはそうだな。回復はサムソンに任せるよ。
……で、何人かいっぺんにダメージ食らって、順番に回復してやってる間に追撃くらって死ぬわけだ」
「「あ……」」
「分かったか? 回復魔法を『置いとく』ことで、治してほしい奴は勝手にそこへ行きゃあいいってスンポーさ。神官は自分じゃ移動できないほど重傷になっちまった奴だけ治してやりゃあいい。手分けするんだよ。チームワークってなァそういうもんだろ?」
「「兄貴ィ!」」
キラキラした目ェしやがって。
チワワか、てめえら?
「あっ、そうだ。受付のお姉ちゃん、登録前に倒した魔物って買い取りOK?」
「はい、もちろんです。
こちらで査定しますので、お預かりします」
「ほんじゃヨロシク。えっとねー……まず、これでしょー? それからこれとー、これとー、これとー……」
自分の影の中から、草原で倒したオークの死体を出していく。
足止め用の「埋没の罠」と「連結の罠」を組み合わせた簡易アイテムボックスだ。埋没の罠で地下へ埋めて、それを連結の罠で牽引している。
埋没の罠はもともと敵の足を泥に埋めるような形のスキルなので、実はそんなに量を多く「埋没」できないのだが、そこは「半回復の罠」でやってみせた通り「重ねる」ことでより深く「埋没」させて解決している。
「ちょ……! ちょ……! ちょっと待ってください! 何体あるんですか!?
こんな量、受付では査定しきれませんよ! 解体場へ持っていってください!」
「おん? 解体場?」
なにそれ? おいしいの?
「おい、バラン、サムソン。説明」
「「へい、兄貴ッ」」
ギルドの裏手に? ほーん……大きいやつとか量が多いときは、そっちに出すのか。ふむふむ……解体してもらって肉だけ持ち帰るとかもできると。え? 魔物の肉って美味いの? へぇー。
「……んで、この近くだと米ダンジョンと玉ねぎダンジョンがあってですね。どっちも名前通りの植物系の魔物ばっかり出るんですが、それを冒険者がギルドに売って、ギルドが街へ流してるわけです」
「へぇー……。あ、なるほど。それでバランは冒険者に」
「ええ。材料を自分で調達して来れば安く抑えられるんで。
と思っていたら、ドジ踏んで死にかけたわけですが……へへへ。面目ねぇ」
「バランが練習で作ったもの毎日大量に食わされるんで、こっちは大変なんすよ。
ツバキの兄貴は、大食いって得意なほうっすか?」
「はァ~? お前ら、それ自分たちだけで食ってんのか?」
「え? ええ、まあ……」
「そうっすね……」
「んバカヤロー! てめー! 何のために料理人めざしてんだコラァ! 食った人に喜んでもらうためじゃあねェのかよ!? 嫌がる仲間に無理やり食わせるぐらいなら、公園にでも行って無料配布してこいや! そしたら腹ァすかせてる人は助かるし、感想もらったり反応みたりして参考にできるし、名前や味を覚えてもらえて将来のお客さんも掴めるだろーが! もっと考えて動けェ! この腐れ脳ミソがァァァ!」
「「あ……兄貴ィ!」」
チワワやめろコラァ!




