第3話 6回だな
「バラン! しっかりしろ! 誰か! 回復魔法かポーションをくれ!」
なんか騒がしいな。
お邪魔しまーすっと。
「おい、あんた! 神官だろ!? 回復魔法かけてくれよ!」
「む、無理だ……その状態では……傷が深すぎる。逆に体力を奪って死なせてしまう。あんただって分かってるだろ……」
「ああ……ポーションも同じだ。体力を消費して傷を治すものだからな。どうしてもって言うなら自分でかけてやれ。あんただって神官じゃあねーか」
「そんな! 見捨てるしかねぇってのか!? ダメだ! バラン! バラン!」
遠巻きに見ているだけの冒険者たち。
その中央に、血まみれの男が倒れ、もうひとりの男がすがりついている。
怪我がひどいのか。どれ、どんな状態だ?
鑑定系の対人スキル「看破」を発動すると、残りHPが1割を切っている。ゲームならそれでも問題なく動けるが、なるほど現実だとこんなに大怪我なのか。骨折と裂傷。出血もひどい。
けどまあ……これなら「6回」だな。
サクッとスキルを発動して――
「おい、あんた。治してやるから、その男を少しだけこっちへ移動させてくれ」
「なにっ!? 本当か! 移動だな? よし、バラン頑張れ! 行くぞ!」
カチカチカチカチカチカチッ。
同じ場所に重ねて設置した罠が、踏まれて全部起動した。
その名も「半回復の罠」――残りHPの50%を回復する。
ぺかーっ、と緑色の光がバランとかいう男を包んだ。6回分重なって起動したから緑色が濃いなぁ。
バランのHPは残り9%だったが、9が12になり、12が18になり……6回目には102%だから完全回復だ。
「う……お、俺は……いったい……?」
「バラン! 大丈夫か!? 痛いところは!?」
「あ、ああ……どこも痛くない……なんでだ……?」
「あ、ありがとう! あんた! 助かった! 命の恩人だ! 俺はサムソン! この恩は必ず返す! 何でも言ってくれ!」
「あ、ああ……なんかよくわからんが、この人が助けてくれたのか?
俺はバラン。料理人を目指してる冒険者だ。どうもありがとう。てっきり、もう死ぬしかないと思ったんだが……ああ、全然これっぽっちも現実感がねぇ……なんで生きてんだ、俺は?」
ガバっと土下座する神官の男サムソンと、不思議そうに自分の体を確認するバラン。
うん……こいつは良いカモを見つけたぜ! ゲヒヒヒヒ……!
「何でもするゥ? ケッケッケッ……それじゃあ、たァ~っぷり恩返ししてもらおうかなァ~」
「う……ご、ごくり……!
…………うぇっ」
うん、なんで今吐き出した?
飲んどけよ、そのツバは。どんな条件でも飲み込もうっつー覚悟の現れじゃあねーのかよ。
「あ、あんまりひどい事はしないでくれ。
助けてもらったのは俺なんだ。恩を返すべきなのは俺だ」
バランがサムソンをかばいに入った。
俺はニタァっとバランを見る。
「なァに言ってんだァ~? 当たり前じゃあねェか、そんな事はよォ~。もちろんアンタも道連れさァ~。決まってンだろォ~?」
こいつら仲良しさんだからな。
一緒に使わないと、何かと都合が悪いだろうぜ。
「う……うう……。
そ、それで、何をすれば……?」
「クックックッ……案内だ」
「案内……? いったい、どこへ……?」
「き……危険地帯なのか? こ、こんなふうに脅さなきゃ案内しないような危ない場所へ……?」
「いンやァ? とっても安全な場所さァ~」
「い、いったい、どこなんだ?」
「どこへ案内すればいいんだ?」
「この街の生活全般さァ~。親が幼子に教えるように、一から十までみっちりと。そう……太陽が登る方向から道の歩き方に至るまで、懇切丁寧に教えてもらおうじゃあねェか」
「は……?」
「え……?」
「クックックッ……俺、このあたり来たばっかりで何も知らないんだよ。
街に入るのに税金とられると思って門番に大笑いされたぜ」
「プッ……!」
後ろから声が聞こえた。
「おい! 今笑った奴! どいつだ! ぶん殴る!」
全員サッと目を逸らしやがった。
よーし、そういう態度か。お前ら全員しばらく下痢になる罠にかけてやるからな。今日からしばらくトイレとお友達になりやがれ。
「ま、街の……つまり、移住者の世話を焼く感じか?」
「そのぐらいなら、別に脅されなくたって……むしろ命を助けてもらった恩返しには足りないじゃないか」
「やかましい! 俺は今そこに困ってんだよ! 助けろコノヤロー!
余った分は他の誰かでも助けてやれよ! そしたら、そいつがまた誰か助けるだろ! 俺は要らねェ!」
「「あ……兄貴ィ!」」
誰が兄貴だバカヤロー。
さっさと冒険者ギルドに登録しちまうか。
「受付のお姉ちゃん。冒険者になるのって、なんか手続き要る?」
「はい、こちらで手続きできますよ」
ニッコニコで案内された。
やめろ! その「本当は心優しい悪ガキ」を見るみたいな目ェ!




