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第18話 そして「榎の物語」へ

「助かった。ありがとう」


 冒険者ギルドに行くと、支部長室に呼び出された。

 そして深々と支部長の頭が下げられた。


「エ? イヤ、何ノコトカナ?」


「誤魔化すのヘタクソか。

 あんなバレバレの変装して、どういうつもりだ?」


「チョット何言ッテルカ分カラナイ」


「オーケー、オーケー。受け取らないつもりか。

 なんでそうするのかは分からんが、冒険者の評価はギルドが決める。お前は今日からAランクだ」


 受け取らないつもりだと理解していながら、押し付けようとするとは、太ェ野郎だ。

 よーし、そっちがそういうつもりなら、こっちにも考えがあらァ。


「じゃ、冒険者やめるわ」


「ふぁっ!?」


「んじゃ手続きしといてくれ」


 冒険者証をポイッと放り出して、俺は支部長室を出ていくことにした。

 後ろから支部長の悲鳴が聞こえてくるが、知ったこっちゃねェ。


「ちょ……! ま……! オイィィィ!?」


 なんで受け取らないのか?

 当たり前だ。あんだけ派手にやったら、次は「お前ならクリアできるだろ」と言われるに違いない。そしてクリア報酬は戦争を起こすレベルのやべー効果を持っている。ならば俺の選択肢はひとつしかない。

 てことで。

 まあ、のんびり牛丼屋やるのも悪くないだろう。



 ◇



「つーわけで、俺は今日から名前を変えることにした」


 牛丼屋の屋台を広げて、営業開始の準備をしながら俺は言う。

 屋台で炊飯するのは無理があって、厨房を借りないと……て事になるわけだが、俺の場合は話が別。炊飯を、加速の罠で時短できるから、注文が入るごとに炊きたてご飯を盛れるっつー寸法だ。旅館とかで固形燃料といっしょに出てくる加熱前の鍋料理みたいなもんだな。丼で炊飯しちまえば、でかい竈も要らねェ。


「兄貴、徹底してるっすね」


「支部長にすぐバレた時点で、『徹底』が足りなかった気がするけどねん。

 名前を変えてもすぐバレる気がするわ」


 そこは別に構わねェ。

 引退した上に名前まで変えて、それでもしつこく迫ってくるなら、通報するまでだ。おまわりさん、こいつです、ってな。牛丼屋をやってるところへ付きまといなんかされたら、普通に営業妨害だし。

 頭はこうやって使わねェとな……ゲヒヒヒヒ!


「まあとにかく、今日から牛丼屋の開店だ。

 バラン。てめえも早く独立して自分の店ェ持ちな」


「頑張るっす」


「兄貴、新しい名前は何にするの?」


「それなんだが――」


 と言いかけたところで、客がやってきた。


「やってるかい?」


「おっと、お客さん第1号か。いらっしゃい。

 うちは牛丼しかやってねェが、トッピングは自由だ。メニュー表みて選んでくれ」


「普通に客扱い……」


「他人行儀すぎて泣けてくる……」


「俺達のこと忘れたのかい、あんた?」


「冗談じゃないわよォーう!」


 不満そうに言う4人。

 バランとサムソンが怪訝そうに口を開く。


「Sランクの……あんたたち、ダンジョンをあちこち回ってくるって言ってたじゃないっすか」


「玉ねぎダンジョンの街で別れたのに、追いかけてきたのォん?」


 4人は強く頷き、あるいは肩をすくめた。


「牛ダンジョンの街が危ねェって聞いたもんでな」


「居ても立っていられないってやつさ」


「俺の故郷なんだ。アドン兄ちゃんたちが眠ってる。荒らされちゃたまんねぇよ」


「てことなのよォーう! そしたら到着して早々に、もう解決したって聞くじゃなァい? 冗談じゃないわよォーう! 必死こいて走ってきたってのにィ」


 モリーが腰に手を当てて、前かがみになりながら上目遣いに俺を睨んでくる。

 お前がやっても可愛くねーよ! おっぱい大きい美少女が谷間みせつけながらやるから可愛いんだろーが! 鏡みてこいテメエ! 濃すぎるメイクに青ひげって、冗談じゃないわよォーう!


「アドンはこいつの長兄な。イドン、ウドン、エドン、と続いて、こいつが末弟のオドンだ。あと俺はゴンツ。よろしく」


「俺はローフ。ちゃんと名乗ってなかったよな。改めてよろしく」


「オドンだ。よろしく頼む」


「モリーよォん。よろしくねェん。

 それで、バランとサムソンだったかしら? 兄貴はなんて名前なの?」


「バランっす。よろしくっす」


「サムソンよん。よろしく」


 一通りの自己紹介が終わって、全員の視線が俺に集まる。


「偶然だな。俺の名前は――アドンだ」


 オドンの兄のアドンは、オークエンペラーに一撃を加えて撃退したという。

 その英雄譚にあやかって、名前を借りることにした。


「牛ダンジョンの氾濫を食い止めた兄貴にはぴったりの名前っすね」


「アドンて名前の人は、英雄になる運命なのよん、きっとね」


「「兄貴ィ!」」


 オドン! 俺はお前の兄貴じゃねェ!

 モリー! てめえ、どさくさに紛れてくっつくな!

 畜生め! ようやくこの世界のことも分かってきて、案内役もお役御免。アドンとサムソンに別れを告げようってのに、コイツラと来たら……!

 あー、もう……! 早く人並みに稼ぎてェ! あと、いつか彼女もほしーなー……この調子じゃあ難しそうだけど……とほほ。

 この物語は、ここで終わりです。

 呼んでくださった方、ありがとうございました。

 楽しんでいただければ幸いです。

 3月1日から「3」の投稿を始めます。

 公開後にシリーズ設定しておくので、ページ最上部のリンクから飛んでください。

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