第16話 結成! Sランク!
「覚悟、決まったわ。アタシも『Sランク』の話、受けるわよ」
モリーが言う。
サムソンに続いて、オネエ神官が増えた。
くそっ、冗談じゃねえ……!
「てか、Sランクって何の話だ?」
「俺達はもともとBランクだったんだ。ミートピアの一件でAランクに昇格って話になってたんだが、パーティーメンバーがそれぞれ全滅してて、昇格したところでまともに活動できねェ」
「それで生き残り同士で集まって新しいパーティーを組め、って冒険者ギルドから言われてるんだよ。宣伝効果を兼ねて」
「その新しいパーティーの名前が『Sランク』だ。オーク帝国を撃退したって事になってるから、Sランクの状況に対応した実績があるAランクって意味で、冒険者ギルドのほうからパーティー名まで指定してきやがった」
「生活費は稼がなきゃならないし、それ自体は悪くない話だけど、唯一の回復役であるアタシがメソメソしてたから動けなかったのよね」
「自分で言ってりゃ世話ねぇな」
ゴンツが言う。
モリーは肩をすくめた。
「仮面の効果って大きいわね。本来の自分を他人事のように俯瞰できるわ」
「効果は分かるけど、なんでよりによってオネエなんだ……恥ずかしくないのか?」
本当は恥ずかしいと告白したサムソンのように……と思って尋ねたら、オネエ2人の圧がすごかった。
「恥ずかしいに決まってんじゃないの! 冗談じゃないわよォーう!
でも『できるだけ自分からかけ離れた仮面』ってことになると、メソメソ男の逆はハツラツ女じゃなァーい?」
「振り切ったほうがいいのよォーう! 眼鏡みたいに、つけてるのか外してるのか分からなくなっちゃうような仮面じゃあダメなの! 自分を誤魔化すために『自分じゃあない誰か』の仮面をかぶってるんだから、どんなに慣れても『アタシ今仮面かぶってる』って分かる仮面にしなきゃ! じゃないと仮面つけたまま素の自分が出てきちゃうんだから仮面の意味ないわよォーう!」
「お、おう……」
コイツラハ「オネエ」トイウ種族ナノダ。
ソウイウコトダ。
「買取査定でお待ちのツバキ様ぁ~?」
「ハーイ、今行キマース。
ジャア受ケ取ッテクルワネ」
「あ、兄貴までオネエに……オネエの感染力おそるべし……」
「何よォーう! 人のこと病原菌みたいにィ!」
「冗談じゃないわよォーう!」
◇
「――はっ!? 俺は何を……? ここはどこだ?」
「あっ。兄貴が正気に戻ったっす」
「領境を越えて、もうすぐ牛ダンジョンの街に到着するわよォん」
「そ、そうか。
あれ? あの4人組は……」
「玉ねぎダンジョンの街で別れたっす」
「リハビリを兼ねて連携の確認とかするために、しばらくあちこちダンジョンを巡るらしいわよ」
「お、おう……そうか……」
「ほら兄貴、見えてきたっすよ」
「あれが牛ダンジョンの街ね」
遠くに街が見えてきた。
ちなみに、俺は転移直後にこのあたりを通って、ミートピア伯爵領からベジタブルヘルズ伯爵領へ(遭難しながら)移動していったわけだが、土地勘がなさすぎて全く気づかなかった。
「ふーん……ベジタブルヘルズの街とそう変わらんな」
街に入ってみた感想は、そんな感じだった。
ダンジョンを取り囲むように発展した街。外側ほど高級店で、内側ほど激安店。
この配置がこのあと正反対に変わることを、このときの俺達はまだ知らない。
「最大の違いは、この壁っすね」
「動物系のダンジョンには必ずあるわよね」
ダンジョンを囲むように壁があった。
ベジタブルヘルズでは、植物系の魔物ばかりだったから、ダンジョンの周りは壁ではなく、単純な広場だった。魔物が溢れたら、物理的な壁よりも油をまいて火を付けるほうが効果的なのだ。
植物系の魔物がどんなに急いでも、焼け死ぬ前に突破してくることはない。足が遅い上に知能が低く、動物的な「視力」を持たないため、炎に囲まれると「どこへ向かえば安全か」が分からなくなって、その場でぐるぐる回るだけになる。
もっとも、この戦法はダンジョン攻略に使うと成果物がみんな燃えてしまう上に、酸欠の危険もあるため、誰もやらないし禁止されている。
「そして警備の兵士も常駐している、と……なんか動きが慌ただしくないか?」
「そうっすね」
「何かあったのかしら?」
とりあえず冒険者ギルドへ行ってみることにした。
すると冒険者ギルドも慌ただしい感じだった。
ギルド職員に話を聞くのは、仕事の邪魔になりそうだ。
近くに居た冒険者を捕まえて、話を聞いてみることにした。
「俺たち今来たばっかなんだけど、何かあったのか?」
「牛ダンジョンが溢れそうなんだよ。Cランク以上の冒険者は集合がかかって……なんだ、お前らFランクかよ。
荷物運びぐらいはできるだろうけど、邪魔すんじゃねーぞ」
「また? こいつは大変だな……」
「ミートピアがオーク帝国に襲われたばっかりなのに……」
「オーク帝国に削られた戦力も補充できないまま対応しなきゃいけないのね……」
どうも難儀なことになっているようだ。




