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第15話 報復のサンドイッチ

「よォ……あんたたち、例の4人だろ? ミートピアの」


「……誰だ、お前?」


「バラン。料理人を目指して冒険者やってる、チンケな男さ。

 あんたらに、礼がしたいんだ。ミートピアでのことは、あんたらの活躍のおかげで民間人に被害が出なかったと聞いてる。親戚が居るんだ……遠縁だけど。お兄さんたちの事ァ残念だった……けど、だからこそ、せめて生き残ったあんたらにだけでも礼をしなきゃァ、助けてもらった側の立つ瀬がねェ」


「要らねェよ……礼が欲しくてやった事じゃあねェんだ、なんて格好つけた事も言えねェほど、俺達は何もできなかった……本当に、何もできなかったんだからな……」


「落ち込んでいたって腹はへる。食事は今日の活力源だ。今日の活力は明日への希望。昨日なにもできなかった奴だって、今日努力すりゃァ、明日には誰かを助けられるかもしれねェ。悲しくても悔しくても、食って元気を出さねェことには明日の希望も掴めねェ。運が良いのか悪いのか、今日この時に出会った俺は料理人。そしてあんたらにきっと最高の飯をプレゼントできる。聞いて驚け。7m級のオーク肉だ」


「なん……だと……」


「いいっすよね、兄貴?」


「バラン。てめえ……使い所が分かってんじゃあねェか。最高だぜ、お前って奴ァよ。

 道具も材料も出してやらァ。始めちまいな。お前のステージだぜ」


「兄貴……分かったっすよ。頭でなく心で理解した。これが『覚悟』っすね」


「さあ、こんなもんで足りるだろ。やっちまいな」


「さてお立ち会い。食って供養の『いただきます』は、命をいただく弔いの味。仇討ちの4人ひと噛みに、このバランが味付けの力添え。

 まずはこちらのパンを1斤、適度な厚みに切り分けまして。こちら小麦は御当地ベジタブルヘルズ。本日は南方ナッツヘブンから取り寄せた木の実を加えたクルミパン。ふわふわもちもちパンの食感にクルミの歯ごたえ。小麦とクルミの風味と味で、風味一番、仇討の装束といたします。

 続きましては彩りの野菜。シャキッと歯ごたえ葉物野菜に、果肉と果汁の赤トマト。お隣ミートピアよりお取り寄せのチーズを薄くスライスで1枚。量はお客様のお好みで承ります。

 いよいよ登場のオーク肉。本日はとっておき、7m級の大物オークだ。最低でも元帥だろうが、どうかするとマジでガチのやつかもしれねェ。ベーコンに加工して秘蔵の肉にしていたやつを、今日は感謝の大放出だ。うちの兄貴が手加減まちがってバラバラにしちまったんでね、元が何だったのか分かんねェけども。

 試作のソースは3種類。甘いの辛いの真ん中の。ひとまず試しに真ん中いこう。甘い辛いはお客様のお好みに合わせてご提供いたします。感謝と尊敬を添えて。さあ、これ食って元気だしてくんねェ」


「……うめェ……仇の肉だと思ったら味もわかんねェかと思ったのに……」


「ああ……確かにこいつは、活力が湧いてくる味だ」


「やるぜ……今は無理でも、いつか俺はオーク皇帝を討ち取ってみせる」


「ううっ……ふぐっ……うぐうううっ……! 兄さん……兄さん……」


「……モリー……こんだけの応援もらってお前は、まだ引きずってんのか」


「ゴンツ。モリーは人間だから仕方ないだろう。価値観が俺達とは違う」


「屈強な戦士でもあるドワーフにとって、戦場で死ぬのは誉。

 自然とともに生きるエルフにとって、死は自然の営みの一部。

 野性味あふれるケンタウロスにとって、死はいつも隣にあるもの。

 それぞれに悲しみはあれど、立ち直るのも早い。

 けど、人間は死を悼み、受け入れがたい痛みになる」


「サムソン。出番だぜ」


「ええ、兄貴……アタシも『覚悟』決めないとね。

 モリーさん。失った悲しみは、愛情が大きいほど強いものよ。だから、その悲しみは大事になさい。そして大事なものは、見せびらかすんじゃあなくて、誰にも奪われにようにしっかりとしまっておくものよ。

 感情をむき出しにしている人ほど、付け入られやすいわ。精神の、強固なところと手薄なところが、丸見えだから。その大切な悲しみを食い物にされてしまうのが嫌なら、大切にしまっておくのよ。扉を締めて。鍵をかけて。

 仮面をかぶりなさい。できるだけ強くて分厚い仮面を……本来の自分とはかけ離れた仮面を。仮面はしょせん仮面。ただの演技。本当のあなたは好きなだけ泣いていたっていいのよ」


「仮面……」


「アタシがオネエの仮面をかぶるのは、性悪女から兄貴を守るためよ。

 本当はこんなの、恥ずかしくって冗談じゃないわ。

 でもやるの。大事なものを守りたいからね」


「サムソン、てめえ恥ずかしげもなくクネクネしやがって……と思ってたら、本当は恥ずかしかったのかよ」


「当たり前でしょ、兄貴! 冗談じゃないわよォーう! やれるもんならあのローズぶっ殺して普通に『男』で過ごすわよォう!」


「お、おう……」


「冗談じゃない……冗談じゃないわよォーう! オークエンペラー『かもしれない肉』なんかじゃ満足できないわよォーう! オーク皇帝ぶっ殺して食ってやるわ! 兄さんたちがやられた通りに! 今度はアタシが食ってやる番よォ!」


「おうっふ……いきなり覚醒した……。

 オネエが1匹……オネエが2匹……ああ、クソ……なんで俺には女っ気がねェんだ……彼女ほしー……」

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