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第14話 玉ねぎダンジョンと惨劇の目撃者たち

「んで、ミートピアってどう行けばいいんだ?」


「ここからだと、玉ねぎダンジョンの街を通って、領境を越えたら、その向こうがミートピア伯爵領っすね」


「ここからミートピアに向かえば、ミートピアで最初に行く街は牛ダンジョンの街ね」


「なるほど。カネがねェから、ダンジョンで稼ぎながら行くか」




 ◇



 てことで、玉ねぎダンジョンにやってきた。

 なんでネギダンジョンじゃなくて、玉ねぎダンジョンなのか?

 種類が多いからだ。

 玉ねぎは、色(黄・白・赤)と収穫時期(早生・中生・晩生)で大きく分けられる。色では黄玉ねぎ(一般的、加熱向き)、白玉ねぎ(辛味が少なく生食向き)、赤玉ねぎ(彩り豊か、サラダ向き)があり、収穫時期では早生は「新玉ねぎ」として甘く柔らかく、晩生は貯蔵性が高く加熱で旨味が増すなど、それぞれ特徴が異なる。

 3種類が3種類ずつ、つまり3の3乗で27通り。これで「大きく分けて」なので、細かく分けたらもっと多い。料理に合わせて目的の玉ねぎを手に入れようと思ったら、けっこう大変な作業だ。


「固いな、こいつら……」


「浅い階層はエンダー系のオニオン(晩生の玉ねぎ)ばっかりだから、仕方ないわよ」


「確保しやすい階層に、運ぶに便利な晩生のが出る……意地が悪いんだか、都合がいいんだか、っすね」


 バラバラにしないように加減して倒すの面倒くせぇ〜! じれったい作業になりがちで、どうもイライラするぜ。高火力の罠で一気に吹き飛ばしたくてたまんねぇよ。



 ◇



 なんやかんやで最下層。

 そしてボス玉ねぎをぶっ飛ばした。


「兄貴、ダンジョンをクリアするなんて、スゲーっす!」


「数百年ぶりの快挙よ! さすが兄貴ね!」


 中層からはついてくるだけだったバランとサムソン。

 兄弟喧嘩でよくあるように、先に泣かれると自分が泣けねェ。アレと同じで、2人が俺より喜んでるせいで俺は意外と冷静だった。


「まあまあ落ち着け。

 喜び勇んでクリア報酬の宝箱を開けたとたんにドカン! なんてのは、ごめんだぜ」


 探知スキルを使ってみると、宝箱には罠がない。しかしその手前の床に罠が残っていた。やっぱりな。サクッと解除して、宝箱を開けてみる。

 そこにあったのは、雫のような形をした謎の物体だった。


「なんじゃコリャ……うおっ!?」


 鑑定スキルを使ってみて驚いた。

 それは3つ集めると、集めたダンジョンの魔物をどれでも好きに、いくらでも召喚できるという代物だった。


「兄貴、それ何すか?」


「見たことないアイテムねぇ」


 そりゃそうだ。

 見たことあったら戦争になってるよ。


「お前ら、クリアしたことは内緒にしとけ。

 墓までもっていけよ?」


「どうしてっすか?」


「それ、そんなにヤバいアイテムなの?」


「戦争が起きるレベルのアイテムだ。

 魔物を無限に召喚できる。倒せるなら食料の確保に便利だが、悪いやつの手に渡ればテロやクーデターに使われかねん。

 まあ、これひとつじゃ無理だがな。マジでそういうレベルの代物だ。絶対誰にも話すんじゃあねェ。いいな?」


 2人に念を押して、そのアイテムを高火力の罠で木っ端微塵に吹き飛ばした。

 こんなもん、完成品じゃなくても「実物がある」という証明だけで危険だ。とりあえずは、兵士やら何やら、組織に強要されて無謀な挑戦に行かされる奴らがゴマンと出るだろう。その後で奪い合いの戦争だ。それも終わったら最後は魔物軍団を率いるアホが世界を敵に回すだろう。魔王とその配下って感じだな。

 ある意味ようやく、このファンタジーな世界にファンタジーらしさが出てきやがったわけだ。全然まったく、これっぽっちも歓迎できねーがな。


「やれやれ……とんでもねェ厄ネタ掴んじまったな」


「ダンジョンクリアして落ち込むとか、兄貴パねえっす」


「歴史に名を残す大偉業なのに、見知らぬ誰かを守るために隠しておく……さすが兄貴ね。惚れるわ」


 分かってんだか、分かってねェんだか……喜んじゃあダメなんだっつーの。

 あとで材料揃えたら、バランとサムソンの記憶に封印の罠をかけておかねェと。本人に話す気がなくても、拷問されたり自白剤つかわれたりしたら絶対じゃねェからな。

 そうして俺達は、何食わぬ顔で地上へ戻った。



 ◇



 冒険者ギルドへ成果物を売りに行く。

 手続きしていると、2階から珍しい集団が降りてきた。滅多に見かけねェ種族がバラバラのパーティーだ。だいたいは同郷の奴同士で組むし、種族が違うと文化も違って色々と厄介だからな。

 ドワーフ、エルフ、ケンタウロス、人間の4人組だ。人間だけ、なんか物凄く落ち込んでて、他の3人はやれやれって顔をしている。

 周りの冒険者は、彼らを遠巻きにして、まるで腫れ物を扱うような態度だ。


「あっ……」


 バランが声を漏らす。

 サムソンも何か知っている顔だ。


「知り合いか?」


「知り合いってほどでもねェっすけど、有名人すね」


「ミートピアを襲ったオーク帝国を撃退した英雄たち……ただし彼らの兄が全部で16人も犠牲になってるわ」


「つまりミートピアの情報が手に入るチャンスだな。

 よし、お前ら声かけてこい」


「兄貴!?」


「それはちょっと鬼畜がすぎるんじゃあないの!?」


「悲しいって顔でもねェから大丈夫だろ。とくに人間以外の3人は。

 第一どんなに悲しくても腹はへるんだ。料理人めざすなら『これ食って元気だせ』くらいの事は言ってこい。

 サムソンも、てめえは神官なんだから、人様の不幸をどうにかしてこそだろーが。なにビビってんだ、てめえの本分を果たしやがれ」


「「あ、兄貴ィ……!」」


 ペッシみたいに震えてねーで、そろそろ成長する時だぜ。俺の教えを「言葉」でなく「心」で理解するべきだ。

 俺たちのやるべき事は――目指すところは、もうそろそろゴールに近づいているんだからな。

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