菜摘未の用件3
昼には少し早いが、昼食を名目にしてどうしても聞きたいものが二人にはあった。
伏見周辺は狭い家屋が密集して、ディスカウントショップのような郊外型の大型の総合店舗は竹田街道沿いにあり、その近くのファミリーレストランに二人は入った。境田も日頃はこういう店で食べているようで、頼むのはいつも日替わり定食だ。菜摘未について意見交換を希望して、いつもは頼まない珈琲をこの日は食後に頼んでいる。
出て来たのはチキンと野菜のソテー炒めにポテトが添えられた定食だ。さっそく二人は粗食しながら、菜摘未が持ち出した切り子細工に至った動機を境田は語った。
「菜摘未さんは、どうも突然の思い付きのようで、これをどうこうとは考えてなかったところに、私があの店を訪ねたようです」
予期せぬ私の訪問に、最初は動転して菜摘未は厄介払いに終始した。あっさり帰ると、急に閃いて、これをあの酒には合うと思った。此処までは境田が今日まで考えた菜摘未の行動分析だ。
「おそらく此の切り子細工は、何処かの店で衝動買いして、多分置物のように眺めていたんでしょう」
菜摘未は結構アンテークな飾りや置物に興味を持っていた。境田も大学時代から見知ってるだけあって、彼女が興味を惹くものや趣味を的確に掴んでいる。
「それであなたがあの酒を買った直後に、ほぼ反射的に二階に飛んでいって、切り子細工を箱に詰めて直ぐにあなたの後を追っかけた……」
「小谷さんもそう思いますか」
「此の計画はその後に急に思いついたように練った菜摘未は、境田さんを私の交渉相手にした」
いよいよ彼女の心境に迫る頃に、二人は食後の珈琲をたしなみ始めた。




