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菜摘未の呼び出し3

「まあそれは恋が成就するまでの仮定ではよくあるが、お互いに信頼で結ばれればそれは嫉妬になるんじゃないのか?」

 境田はできるだけ穏やかに話した。

「じゃあ、数分おきに相手の気持ちが沈むと嫉妬だと思うのッ」

 菜摘未の場合いは嫉妬でなくヒステリー(病気)だ。二人以外に思いを寄せる人が居る場合で、二人だけの場合は入り込む余地はないはずだ。と今更ながら、嫉妬の意味を深く掘り下げて、菜摘未に言って聞かせた。案の定彼女はむかついたのか怒り出した。

「どうしてそんな子供扱いするのよ!」

 彼女の気分転換の口実に乗せられて、しまった。菜摘未と付き合っていた頃は、このような口車に乗せられると、気分転換まで暫く女王様扱いをしなければならなかった。時にはそんな優越した気分を味わう為に、敢えて意地悪な質問をさも真面目そうに切り出してくる。今日もまた始まったかと、彼は下部しもべのように従順に徹したのも気に入らない。当然馬鹿にしないでよと怒り出す。

「まあいいわ、久し振りに会ったのにつまらない事で時間を潰したくないでしょう」

 珍しく向こうが折れたのも、半年ぶりの再会の効能なら期待も出来よう。

「それで後からわざわざ追っかけてまで渡してくれたあの小さな箱はあの酒に付いていたの?」

「そんな訳ないでしょ、普通おまけが付くのはキャンペーン中のお酒だけよ」

「じゃあ、あれば何なの?」

「そんなもの聞かなくても、いつものあなたなら解りそうなものなのに、それってあたしに対する当て付け」

 当て付けも何もありゃしない。ただ君の気持ちを確かめたかっただけだ。素直じゃないのはあの頃と変わらないが。

「あの切り子細工の入ったぐい呑みは、あれで酒の味わいがまして来るからてっきりそう思った。全くいいセンスをしていると感心させられたのに……」

「そうなの」 

 やっと菜摘未は表情をほころばせた。注文した珈琲が冷めた頃に、やっとあの頃の彼女が戻って来た。


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