散歩道の船着場3
「本当に万引き何かしたんですか、しかも彼女の店で」
妹も妹ならこの人もこの人でお似合いな気がする。
「それって矢っ張り万引きになるのか? だって親しく付き合ってる相手の店の商品だろう」
「それでも勝手に持ち出せば矢っ張り万引きじゃないの」
此の二人の勝手な論争に境田は「そうじゃない、菜摘未さんの見てない所で千夏さんがお花見に行くのならとそっとカップ酒を二つ手提げ袋に入れてくれたんです」と謂われて論争にケリが付いた。
「まあそうだとしても、見も知らないしかも船の上でほろ酔い気分になる花見客の酒を引ったくるか」
「そうよね、境田さん、何でそんなことを菜摘未ちゃんはしたの?」
これには香奈子も不可解過ぎた。
「腐った幹には腐った酒がお似合いよ」
と言ったきり黙ったから、境田が高い酒を直ぐに宛てがった。
後で菜摘未さんに訊ねると、いつも今年が最後かと満開に咲き誇る桜なのに、船の周りは大半がお年寄りで、桜が不貞腐れているのよ。だからお神酒代わりに投げたそうだ。
そう言えばあの子は、少子高齢化で老人問題の設問に奇妙な答えを出していた。
桜は幹が腐っていても立派に花を咲かせるのに、年老いた人はどうしてそんな華やかさを保てなくて老い草臥れていくのか。なぜ年相応に振る舞うのか。もう一度桜のように咲いて散れば、人はその価値に気付くだろう。この飛び抜けた回答に先生はウーンと唸った。
「それを考え出す菜摘未こそ年寄りっぽくないですか。そんな彼女との船上の花見は楽しかったのですか?」
「それはもう傍に居られるだけで、いつも満足感が充実していたんです」
そこで龍馬通り商店街のいつもの喫茶店で待つ、と菜摘未から境田に突然メールが着信した。
これには全く不可解、と香奈子に言われて、小谷も理解不能だと二人は境田を見送った。




