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散歩道の船着場2

「そうかも知れませんね、さっき店で見た時より小さい箱に入った物を差し出した時の菜摘未さんはそんなに無愛想じゃなかった」

 それでも笑顔にはほど遠い顔だが、店に居た時とはかなり変わったのには正直胸の支えが取れたが直ぐに彼女に立ち去られた。

 境田は残念そうだが、最近、菜摘未とは行き違いばかりの小谷にはこの行動はスッキリしない。

「その後、小谷さんは菜摘未ちゃんには会ってないの?」

 香奈子も同感のようだ。

「店を出たっきり帰ってこないから直ぐに君の店に直行した」

「でもうちにも来てないのよ」

「いつもと違う彼女の行動には謎だらけで、今日は戸惑ってここに来てしまった」

 いつも不安定な菜摘未と、真剣に付き合っていた境田も、今日の変化は掴みきれない。

「そうなら境田さんはわざわざこんな所でどうして独りで呑んでいるの?」

 此処は彼女の家に来た時にはデートスポットで、春の桜の頃には三十石船にも乗った。三十石船に乗る観光客は年寄りが多く、長生きする彼らと、明日には散ってしまう桜を見上げて菜摘未は嘆いていた。そうかと思うと、彼女の場合は次の動作に移る準備なんて、全く見当も出来ずに、それこそ急に行動するから時には驚かされる。

「その時、菜摘未は、その急に何かをしたんですか」

「隣の老人が呑んでいたカップ酒を引ったくると桜めがけて思い切り投げたんだ」

 勿論、老人は驚いたが、すかさず俺が菜摘未の店から持ち出した、特級酒のカップ酒を渡すと、老人は上機嫌になった。隣の妻とおぼしき年配のご婦人が「あなたあんな安もんの酒を呑んでいるから見るに見かねて上等の酒を差し入れてくれたのよ、感謝しなくっちゃ」と言って何とか収まった。店で買ってないのにその酒はどうしたの、と菜摘未さんにえらく追求されました。

「よくもまあ、店の酒を勝手に持ち出して、しかも高い酒を……」

 今度は万引きの現行犯として問い詰められました。


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