酒蔵が続く散歩道3
公園に着き、細い木の橋を渡ると『龍馬とお龍愛の旅路像』がある。お龍は懐にいれた龍馬の肘辺りにそっと手を添えて、二人の立ち姿は向かい合うのではなく、揃って同じ方角を見ている。
香奈子と小谷はその銅像前に立った。此処から二人は、寺田屋で負った龍馬の傷の療養を兼ねて九州、薩摩へ旅立つ。
「二人は此処から新婚旅行に旅立ったのよ。お互いを見詰めないで二人とも随分と先を見ているところが同じ大きな目的に向かっている感じがしないかしら」
同じ夢に向かって寄り添うなんて羨ましいとも言った。
「それで愛の旅路像なのか」
「丁度こんな風に」
と香奈子は像を見詰める小谷の肩にそっと手を添えた。
「どうしたんですか」
小谷が分かり切った質問をさりげなく言った。
「もうー! 、唐変木」
添えられた手で、小谷は思い切り振り払われてしまった。よろめく小谷に「大丈夫かしら」と直ぐに気遣われた。
その先にある三十石船の乗り場には、波を模した敷石がはめ込まれていた。広場には三十石船を模した屋形船と三つのベンチがあった。師走なだけに誰もいないと思いきや、屋根付きの待合所にはトレンチコートに身を包んだ男が独り座っていた。
「アラ、珍しい、この時期に人が居るなんて仕方ないわね、手前のベンチに座りましょう」
桟橋を真似て並んだベンチに香奈子が近寄ると、小谷はそのまま船形をした待合所に乗り込んだ。慌てて香奈子も後に付いていった。
「境田さん」
小谷は屋形船風の船縁に作られた長椅子に、座り込む男に声を掛けた。男は十和瀬酒造のロゴが入った四合瓶が入ったビニール袋を横に置いていた。男は船縁に肩肘を掛けてぐい呑みを持ったまま、静かに拓けた船着き場を眺めている。




