酒蔵が続く散歩道2
「菜摘未の行動範囲に合わせて徐々に遊びに来なくなったのか」
「そうね、最初は男兄弟の中で急に出来たお姉さんって感じだったから同じ年頃の友達が出来るとどうしても足が遠退くのよ、でも姉妹だから来ようと思えばいつでも来れる気安さもあって困ったときしか来なくなったわよ」
「その辺が反比例してくるなあ、こっちは菜摘未が大学生前後になると面倒な子だなあとそれまで想っていたのが向こうからよく話し掛けられると最初はドキッとしたが、馴れると彼女の気分に合わせて話せたから親しみが湧いてきた」
「それって急にあの子が色気づいて来たって言うのッ」
急に香奈子は不機嫌に声のトーンを下げたが、穏やかな瞳で見返された。小谷は彼女の澄んだ瞳に救われて笑ってすり抜けられた。
「まあいいわ、あなたの好みは解っているから心配ないけど」
何か意味ありげな言葉にそわそわしたが「余計な事を言ってしまって誤解しないでね」と併せて言われると、急上昇した胸のときめきが急降下してしまった。
それでも言葉とは裏腹に彼女の溢れる笑顔で、どん底まで落ちずに辛うじて踏みとどまれた。
「此の前読んだ本の感想だけどあたしの想っているとおりなので嬉しいかったわよ」
これには這い上がれる勇気を少しは与えられた。しかしなぜあの時に言わないで今になって急に告げるのか、いや、今だから告げたのかも知れない。
「想っているとおり幾ら神学校で徳を積んで司祭になっても、それは徳を極めるより愛を極めれば徳を知らずとも死ねるが愛を知らずしては死ねない。あの本はそう我々に語りかけているけれど、過大な思いやりが愛の集大成なのかなあ」
今度は白い歯を見せて「そうね」と肯きながら香奈子は、此の先の運河(疎水)沿いに在る、伏見みなと公園に案内した。




