君枝の店3
「今の菜摘未にはそんな風には見えないがなあ」
「そうねー、今は遠目に見ていられるのも若さから来ているのね」
「若いって言ったって五つも違わない」
「年頃の人にはその差は大きいわよ」
それに菜摘未ちゃんは小さいときから勝ち気な処があって、親がやることには悉く気に障っていた。歳の近い姉の香奈子さんの存在を知ってから、よく遊びに行ったのも親への反感が募った結果だ。腹違いの姉妹には、お互いに相反する共通のものが芽生えたとしても、心の持ちようは全く正反対に作用している。こうして二人を身近で見比べると益々その傾向を強く感じる。
「それは希実世さんは僕らから距離を空けて見てられるからそう取れるんでしょう」
「そんなことないわよ」
希実世の反論に、そうねと香奈子さんも同調した。
香奈子さんも中学生時代は此の店の二階で菜摘未ちゃんの勉強を手伝っていた。社会や国語、理科より、主に算数の問題ばかり付き合わされた。そんな計算問題なんて学者でなければ世間に出ても余り役に立たないと云っても、これは答えがひとで、これが出来なければ恥を掻くが、記述式には決まった答えが割と少ないからそっちは適当に遣っていた。
「そうか、まさか人の感情まで計算ずくめなのかしら?」
「そんなところって余り見受けないけどなあー」
「要するに猫かぶりなのよ」
香奈子さんはお客さんの注文が途切れると、二人の前にやって来ては話を途切れ途切れに聞いている割には、話の内容を良く捉えていた。
「そうだろうか」
「でも最近はもう少しましだと想うけれど」
希実世さんより長く身近に接してきた香奈子さんは思慮深いようだ。




