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十和瀬の新居6

「いつもこんな感じで十和瀬とは話してるんですか?」

「今日は珍しく今だけ、多分小谷さんがリードしたからかしら、此の人いつもあんまり喋らないのよ、デート中はあんなにはしゃいでくれたのにスッカリ騙された」

 微笑みながら言うところに小谷は愛の片鱗を感じた。

「人聞きが悪すぎる」

 満更でもない十和瀬に、夫婦間の修復の見込み有りと受け取れる。

「別に希実世さんでなくても俺と居る時も余計なことは喋らないですよ」

「男どうしのお喋りはみっともないけれど……、所帯を持ってる相手とはそうはいかないでしょう」

「でもね、毎日顔を見ていれば喋るネタも尽きるでしょう」

 沈黙する十和瀬を尻目に小谷は孤軍奮闘する。

「そんなもんじゃあないでしょう。テレビや新聞からでも話題は何でも出来るのに……」

「そう言えば、この部屋にはテレビは置いてないんですか」

「向こうのキッチンルームにはあるけれど。此処は、ただ、寛ぐ場所なんですって」

「十和瀬、お前仕事がないときは毎日此処でどうしてるんだ」

「俺は小さいときから周りには親兄弟以外に酒の仕込みをする大勢の人の中で育った反動なんだろう、こうしてリンビリで寛げるのが唯一の楽しみなんだ」

「お前はそれでいいだろうが、昼間ずっと一人でいる希実世さんにすればやっと帰って来て家に入るなり瞑想されたらたまらんだろう」

「瞑想なんて、そんないいもんじゃないけれど、帰って来ればその日あった事ぐらい話されてもバチは当たらないと思うわよ」

「そう言う宗教じみた話はスカンのだ」

 バチが当たるぐらいで何処が宗教じみてる。

「やっと日の当たる会話に成ってきたのは小谷さんのお陰がしら、でも癪に障ることを並べないと会話にならないなんて寂しすぎると思いませんか?」

「まあ恋愛時代はいかにして相手の気を引ける洒落た文句で話を繋げるかに掛かって来ますから、今の十和瀬はやっとそんな境地から抜け出してホッと一息吐いている時期で、そのうちに気の利いた文句を言い出すようになるでしょう」

「そうかしら、このままだと棺桶まで無言で入ってしまいそう」

 まだ人生これからなのに、そんな先のない事を考えれば、人生そのものが暗くなる。そうさせたくないのが希実世さんの切実な願いらしい。


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