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十和瀬の新居4

 十和瀬は煙草を灰皿の上で揉み消して希実世に催促した。此の家では肝心な事を訊く時は煙草を消すのが仕来りらしい。

「それで妹は俺の事をなんて言って貶したんだ」

 十和瀬に対しては厳しい表情を取っていた希実世も、これで少しは穏やかになった。 

「他人が聞いたら吃驚びっくりするけれど、小さいときから一つ屋根の下で暮らした兄弟なら彼女には大したことではないわよね」

 と十和瀬でなく、はばかりながら菜摘未は先ず小谷について喋った。次兄が家に連れて来た小谷について子供心に全然兄とは違う雰囲気に最初は見とれた。その内にぶっきら棒な兄と違って愛想良く接してくれて温かみを感じた。毎日顔を合わすお兄さんと、偶にしか家に遊びに来ない人との違い以上のものを感じ、大学生になっても菜摘未は変わらなかった。それは如何どうかしているって問い詰めても、おそらく菜摘未には説明できなかったのだろう。急に思いも寄らぬ気持ちを訊かれて狼狽うろたえたが、そこは表面上は毅然として答えていた。これには十和瀬も妹が妻に話したのは小谷ばかりで、自分への関心度の低さにがっかりした。 

「それで小谷さんは、菜摘未ちゃんとはどうなの?」

 小谷にすれば、最初は畏まって可愛げの無い子供やと思った、がそのうちに慣れると悪戯いたずらばかりされた。それだけ構って欲しいんやと悟ると一緒になって遊んだ。菜摘未が中学生になると照れくさく成ったのか、そんな馬鹿な事はやってられんとそっぽを向かれてしまった。距離を置くようになって嫌われたらしいと思ったが、気恥ずかしくなったようだ。大学生になると今度は逆に堂々とそばに寄って来て、近くの店や喫茶店で食べたり話し込んだりするようになった。それと同時進行で菜摘未は大学時代の男と深く付き合いだした。それで俺はもてあそばれていると想った頃に、十和瀬が香奈子を引き合わせてくれた。


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