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十和瀬の新居3

「そうなの? 小谷さん」

「ああ、言われてみればそうだなあ、十和瀬が呼び捨てにしているのがそのまま移って仕舞った」

「エヘー、そんなに古い付き合いだから小谷さんの色んな事を菜摘未ちゃんは知ってたのね」

「色んな事って?」

「色んなことは色んな事よ」

「だから何を聞かされたんですか?」

 また彼女はウフフと笑った。ここまで来ると十和瀬から事前に聞かされていた彼女とのギャップに戸惑ってしまう。真意を訊く為に十和瀬に無言の圧力を掛けたが、我関せずと煙草と共に煙に巻いていた。ヤレヤレ一体俺は何しに来たのかとため息を紅茶で押し流した。

「披露宴では菜摘未は明るく振る舞っていたけれど、あれでいて結構喜怒哀楽の烈しい人なんですよ」

 まあそうなのかしらと夫を窺いながら、小谷にあの人は根は寂しがり屋なんですよ、と擁護してくる。嘘吐け! そんな菜摘未を今までかつて一度も見たことがなかった。

「そんなことはないでしょう。彼女は結構衝動的に動くから、現に此の前は一年以上付き合っていた男を振ったそうじゃないですか」

「その話なら聞いているわよ」

 これには十和瀬も小谷も以外だと驚いた。

「お前いつ聞いたんだ」

 真っ先に十和瀬が訊ねた。

「半年前かしら」

 菜摘未の電話では、振った男より仕向けた兄を散々にけなしていたそうだ。兄は人の恋路に勝手に割り込んでくるなんて許し難し。しかし訊いている十和瀬は、妹の此の挙動は寝耳に水で今初めて知った。これには小谷も笑いを噛み殺すのに苦労した。新婚で実家を出ていても実の妹の行動をこんな場所で、しかも小谷の訪問で電撃的に知るかと思うと開いた口が塞がらない。これでは身内の蚊帳の外に置かれている十和瀬が哀れに見えて来た。


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