十和瀬の憂い6
「お前、何が言いたいんだ」
「お前に説明してもいつも曖昧にしてしまうから言っても張り合いがない。それより希実世さんは俺のことどう説明してるんだ」
「高校時代からの友達だ」
「それだけか」
「他に何がある」
「そうじゃあねえんだ、向こうが何も知らなきゃあ話が進まないだろう。俺もお前の奥さんは披露宴で仲人から聞いた範囲でしか知らねえのに、何を喋れば良いんだ」
「話してみるかと言ったのはお前だろう」
肝心な時はいつもこうだ。呆れた奴だがいつものことだ。
「アッ、一つ想い出した、十和瀬、妹の菜摘未とあの花嫁、えらく高砂の席で話が弾んでいたが傍に居て何を聞いたんだ」
「あの時は俺の席の周りにもおかしな連中に取り巻かれて騒いでいたから知る訳ないだろう」
「希実世さんと話すのはいいが、話の切っ掛けがなければ何から喋っていいのかわからんだろう」
「そうだなあ、新婚旅行に付いて言ってやるから、聞け」
横着な言い方だが照れ臭いのが丸分かりで腹で笑った。
新婚旅行は美術館巡りをやって、その後でパリのモンマルトルの丘で画家崩れの喰えない似顔絵描きに希実世は描いてもらった。それが気に入っているからその話なら乗って来るとアドバイスを貰った。
「エヘー、希実世さんフランス語が喋れるの」
「喋れる訳ないだろう、英語もろくに分からないのに」
「ハア? じゃあどうして似顔絵を頼めたのだ」
「その絵描き日本人だったんだ」
それを先に言えと笑った。
「こう言う切り出しだと内の奴も乗って気やすいだろう。あとは小谷の話し方次第だ」
いつもなあなあで済ます十和瀬にすれば、珍しく込み入った解説をしてくれた。電車も出町柳駅に着いた。




