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鴈治郎の来店2

 口で含むと芳醇でありながら適度な刺激のある辛口なのに、喉には少ない刺激で通るから飲み応えがあった。

「どや」

 鴈治郎は覗き込むように小谷の反応を視た。小谷は呑み残したグラスを暫く手の中でもてあそんでからいいですねと言った。

「どうええのや」

 ハッキリせいとったそうにした。お父さん期待してるわよ、と香奈子に云われて、うるさいと言わんばかりに貌を顰めた。

「辛口なのに口当たりがいいですね」

 これは売れるけれど、とカウンターに置かれた四合瓶を眺めて、値段を聞いてウ〜ンとうなった。

「もう少し安くなりませんか」

 今度は鴈治郎がウ〜ンと唸った。

「数が少ないのや」

 どうもそれがネックのようだ。

 鴈治郎から極上の酒を受け取った君枝は、また飾り棚に戻した。

「今、杜氏の大西さんと量産出来んか四苦八苦しとる」

「お酒の話はそれぐらいにしたら」

 香奈子に云われて、鴈治郎もそやなー、先代からもっと造り方を聞いとくべきや、と云う独り言が実に子供ぽかった。

「ところで小谷はん、あんたは次男の幸弘とは相性はともかく長い付き合いなんやそやなー」

 どうも彼奴あいつの考えてることは分からんと会長はぼやいている。よくよく話を聞くと奥さんの希実世さんの事だ。

「何で次男は妻の言い分ばかり聞いているのか君なら解るだろう」

「お父さんそれ無理、この前も二階でその話はしたけれど、あたしと同じで余り会ってないからと言うより、こちらから行く用もないし、あの夫婦が来ても二人で話しているだけであたしも割り込めないし、お母さんは尚更無理だから……」

「どうも希実世さんの事なら義姉である千夏とは良く話をしている。それでか、幸弘を戻して君をうちの担当者にしたのか」

「十和瀬酒造の担当は千夏さんは関係ないですよ」

 たまった母の灰皿を捨てながら香奈子は言った。


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