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スナック「利き酒」3

 あとで菜摘未ちゃんが家に遊びに来て知ったけれど。なによ、会長の女は、あれだけの家族に包まれていながら、浮気だと不満たらたら述べてるから、あたしのお母さんの身にもなってよ、と菜摘未ちゃんも同情して二人で不公平だと思った。だってあの時は鴈治郎が二人の女性を同等に愛したのに、此の差はなんなの。片や酒造会社の女将で三人も子供が居るのに、あたしの所は狭いアパートに一人で夜はお留守番。

「小学生と中学生のふたりがそう思ったのか」

「今から思うと笑えるけれどね。でもね菜摘未ちゃんも酷いと言ってた。今は亡き鴈治郎のお父さんの勧告で世間体が悪いのか、それとも沽券に関わるのか母にお店を持たせてくれた。菜摘未ちゃんは亡くなった祖父に一番可愛がられていたから彼女に言われると一番にこたえるみたい」

「なるほど、既に小学生にして策士か」

 考えずに冗談で言ったが、眉をひそめて「まあッ」と言われて迂闊だと想ったが、緩んだ瞳に救われた。

「まさか、それは考え過ぎだけれどお父さんへの不満をあの頃はたらたらと述べていたのよ」

「聞けば聞くほど、付き合ってみて菜摘未には今もそんな所がある」

 と小谷も頷けた。

「あの子は大丈夫、そんな狭い了見は持ち合わせていないと想うけれど……」

 了見は狭くないが感情が不安定なのが気になる。

「それじゃあ此処へも呑みに来ますか?」

「ちょこちょこ来るわよ、それでもあの一家では鴈治郎さんに次いで二番目かしら」

「十和瀬夫婦より多いのか」

「あの夫婦は片寄ってるけれど菜摘未さんはまんべんなく来るわよ」

 時間が経つと店も賑わって来た。いつ来るが解らない気紛れなカウンターの指定席は「オッ、今日は何の日だ」と突然埋まった。

 やって来たのは鴈治郎だ。彼は指定席に着くなり着物姿の香奈子を眺め回した。


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