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スナック「利き酒」2

「お母さんと何を話してたの」

 母に注文を伝える傍らで小谷は聞かれた。意地悪そうに「その着物、初デビューか」と揶揄からかうと、香奈子は小悪魔的な笑みを残して睨まれた。

「いつも二階で普段着のあたしばかり見ているから、たまにはいいと夜のお店に合わせてだけよッ」

 意地悪そうにきつく言われた。

「嘘ばっかり、いつも普段着でお店に出てるのよ。この子は」

「もうー、お母さんたら意地悪ね」

 ハイハイそうですよ、と母に言われて、注文のお酒を受け取るとサッサとテーブル席へ持って行った。

「あなた、しっかりしなさいよ。あの子ひと癖あるから」

 香奈子の後ろ姿を見送ると、眉を寄せて上目遣いに君枝に言われた。

「エッ!」

「でも大丈夫よ、今までの中では一番真面な振りをしているから」

 何度も言い寄る男がいたのか。

「でも着物は今日が初めてでしょう」

「そうねー、七五三以来かしら」

「何が七五三なのよ」

 香奈子に声色こわいろまで使って文句を言われた母は、何でも無いわよと奥に引っ込んだ。

「君の着物姿は七五三参り以来か?」

「そうでもないわよ。千夏さんの披露宴でも着たのにスッカリけてる」

「可愛いだろうなあ」

「千夏さんの披露宴の時」

ちゃう、七五三の君の姿」

 七五三参りは平安神宮に行ったけれど、履いた足袋がきつくて歩きにくかった。なのに母はサッサと歩くから。とにかく記念写真を撮ってもらいたかったみたい。みんな両親が居るのに、あたしだけお父さんが居なかった。多分今から想えば鴈治郎さんにあとでこっそり晴れ着写真を見せたかったのね。でも私はそう悲観しなかったけれど。

「でも菜摘未さんを紹介されたときはショックだった」

「そうか? 菜摘未に言わすとあの時はかなり気丈な子だと言っていたが」

「家を出るときに母から動揺しないように言い含められて、表向きは気を張りとおしたけど、帰りはもーう気持ちがガタガタになってたのよぅ」


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