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香奈子の誘い2

「それで十和瀬の披露宴の時には居なかったのか」

「だから幸弘お兄さんに、あなたのようなお友達が居たなんて知らなかった」

「それじゃあ、十和瀬の奥さんの希実世さんは会ったことはないの?」

「そうねー、披露宴には行ってないけど、新婚旅行から帰ってからお土産を持って幸弘さんと一緒にお店に挨拶に来られたから、その時に初めて会ったけれど……」

 それが先代女将は「実の家族なのに式も披露宴も反対するなんて酷い義母ね」とお店で母を相手に散々愚痴っていたそうだ。それからお店には何回か希実世さんは十和瀬家の愚痴を言いに来て、此処はていの良いけ口に成っているって母がぼやいていた。こんな時でも母の君枝は、浮き名を流しただけあって、大抵の苦情には動じない。それがどゃっちゅうねん、と心の中では相手の義母をあざ笑っていた。要するに真面に相手をしないだけ。そんな接し方が希実世さんには受けて、それから来るようになったが、いつも幸弘さんと一緒だった。

 希実世さんは高校までは小中一貫校のミッション系の学校を出て、大学で始めて共学の授業を受けて初めて恋した男が兄の幸弘だったと聞かされた。彼女は言いたい放題の性格だけど、意外と引っ込み思案な処もあってスナックへ呑みに行くのも、それが親戚の店でも一人ではまだ来にくいらしい。

「あっ、そうなの?」

「小谷さんも希実世さんとはそんなに会わないの?」

「十和瀬の披露宴で見たのが初めで、それに彼奴あいつはいつもアパートの手前で別れるから噂の範囲でしか知らないが。じゃあ彼女は高校までは聖書を愛読してたのか」

「そうでもないわよ。あの人は神様なんて糞食らえって酔った拍子に云ってそのままカウンターに額を合わせて酔い潰れて仕舞ったのよ」

 その時は幸弘さんから、実家に対する鬱憤を晴らしているだけだと聞かされた。


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