香奈子と千夏2
そもそもこう言う事態になったのは彼奴の奥さんが菜摘未に嗾けたのか?
「あなたがうちの御用聞きになったわけを知りたいの?」
「どうやら十和瀬を実家に引き戻す話を最終的に纏めたのは千夏さんでしょう」
「そうなの?」
「聞いてないの、お兄さんの十和瀬から」
「お兄さんお兄さんって言われても……」
「腹違いは聞いているけれど矢っ張り気になるか」
「そう言う訳じゃないけれど、知った経緯がちょっと」
「ちょっと何ですか?」
あの時は驚いた。あの日は母がお店を休んで、あたしが帰って来ると大事な話があると待ち構えていた。そこであたしに、兄と妹が居るとその時に初めて聴かされた。これからご挨拶に行くって言うから、訳を、経緯を聞かせてくれないと行くのは無理って言うと、観念して初めてお父さんの存在を聞かされた。それまではなんぼ聞いても、父はこの世に居ない人だと聞かされていたから驚いた。
十和瀬の話では菜摘未は薄々感づいて、全く知らなかったのは、香奈子と菜摘未の兄二人だけか。
妹が入院している病院まで母と一緒に、死んだはずのお父さんに会いに行った。
「それから上のお兄さん二人とは疎遠じゃないけれど、何か打ち解けにくかった。反対に妹の菜摘未さんは、厚かましほど家に遊びに来るから、多分小谷さんを十和瀬酒造の出入り業者にしたのは、菜摘未さんだとばかりに思っていたけど……」
「それが発端は希実世さんで、彼女は菜摘未だと埒が明かないと千夏さんに取り入って、そっからドミノ現象で回り回って僕がこうして来てるんですよ」
「千夏さんは此の店には滅多に顔を見せないから気さくな人だとは聞いているけれど、そうなの ?」
香奈子にすれば千夏とは会う機会が少ない。
「香奈子さんは、十和瀬の実家には行かないんですか」
「あそこの古女将の目が黒いうちは敷居を跨がしてもらえないのよ」
まあー、今時、なんと言う凄い怨念と、これには二人とも笑ってしまった。




