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十和瀬の話を聞3

「その菜摘未だが、千夏さんの話では俺が来るようになってから避けてるのはどうしてだ」

「待てば海路の日和ありじゃないか」

「そんな他力本願で動く女じゃない、くだらん話はよせッ」

 こんな時にまで無駄な話をしやがるとムッと来た。

「そもそもの原因は、お前が俺に香奈子さんを紹介したからだろう」

 しかもそれは妹の付き合っていた相手の為だと知れば尚更だ。

「その相手の男を知っているのか」

「ああ、あの家に一度連れて来た事があった」

 お前に似てひょろ長い男だが、顔立ちは流石に妹が見付けただけに品があった。同じ大学生だから三年は付き合っていただろう。どっから見ても相思相愛の羨ましいカップルに見えた。だがじっくり観察する機会があった。そいつと偶然大手筋で出会って飲みに誘うと付いてきた。店は勿論あの『利き酒』だ。暖簾でなく押して開けるドアまではスナックだが、中はずらりと日本酒が並んでいた。相手はウイスキーをたしなむと知ってビールにしてもらった。それで俺も合わせてビールにした。彼奴あいつは酔いが回ると、妹を愚痴り始めるから、今までのイメージとは掛け離れて驚いた。よくよく聞いていると妹は一方的に言う方で、今まで男はそんな妹に従っていても不満は無かった。だが俺は不満だった。此奴こいつは捨てられると思ったからだ。

「そう勝手に決めるな、それでもはたから見て上手く行っていれば兄のお前が何で相手の男を別れさす」

「菜摘未はあの自転車事故の時のように、何でも利用できる物は利用するんだ。今度の標的はお前なんだ」

「エッ、どういうことだ」

「付き合っている男とお前を見比べてその違いが分かったのだろう、それでお前の方に決めたから、俺は男に別れろと散々勧めたが益々意固地になったから小谷、お前を香奈子に会わせたのだ」

「それじゃあ別れた男は今頃どうしてるんだ」

「そんなこと知るか! しかし先行き不幸になる前に治療しただけだ。あの男がすっかり回復すれば俺は用済みだろう」

「再発すれば」

「それも恋だろう、だがそれこそが本当の恋だろう」


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