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十和瀬の話を聞く1

 事務所の奥は母屋で更にその奥が蔵だ。事務所の縁側の引き戸を開けると、細い路地が奥の工場まで続いていた。細長い土間を歩くと、広くはないが母屋と酒蔵を分ける庭に出る。庭の真ん中に踏み石が母屋から蔵に続いている。踏み石の両側には紅葉と柿の木が植えてある。紅葉も柿の木も酒造りの時期をたがわぬように植えていた。紅葉が色付く頃に、蒸し上がった米に麹を混ぜて樽で発酵さして、紅葉が冬枯れの枝になる頃にもろみ造りに入る。いま庭の紅葉は全ての葉を落としていた。これからが一番気の抜けない時期に差し掛かっている。酒樽の中で眠るもろみの温度管理が大変なのだ。温度の上がり下がりで発酵の進み具合が変わる。旨い酒にするためには、常に一定の温度管理が欠かせず、そしてもろみも混ぜる必要があり、杜氏には目が離せない時期だ。暗い蔵の中へ足を入れると、忙しなく大西さん達が動いていた。その横に十和瀬が、似合わぬ十和瀬酒造の前垂れをして、腕組みして立っていた。小谷は先ずは大西さんに状況を聞いてから、十和瀬幸弘の許へ歩み寄った。

「十和瀬、こんなとこで何をしてるんや」

「見て分からんか」

「ああ解らん、十和瀬には此の樽の中で発酵している酒のもろみの様子が分かるのか」

「樽に手を当ててその温みで発酵しているのが判るそうや、酵母は此の中で生きてるんや、そして旨い酒を造ってるんや」

「それで今どう謂う状態や」

「それが解るにはもっと年季がいる」

「ほな、ここに居てもしゃあないやろう」

「解らんなりにも発酵している酒の声を聞いていたいんや」

 十和瀬は暫く大きな酒樽を眺めている。そこへ思い切って聞いてみた。


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