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千夏の話6

 それでも彼奴あいつの行動は正義ではない。相手の男を説得させて諦めさせる、それが正当な遣り方だと思う。千夏も同感のようだ。菜摘未の遣っていることは、自分だけが正義だと思っている、これは兄の幸弘も同じだ。何処どこで絡み合っているのか解らんが、似た者同士なんだろう。それを言うと幸弘は、烈火の如く怒るだろうが、時間が経てばその矛先は、自分の中に収まっていく優しい男だった。

「ところで菜摘未は出掛けているのか」

「貴方が最近来る時間が分かったのか、いつの間にかその時間になるとフィと出掛けて仕舞うのよ」

「じゃあ十和瀬は奥の酒蔵に居るのか、杜氏でない彼奴あいつが居たって酒が変わるわけがないのに、ご苦労なこったなあ」

 これも妻の希実世さんの為なのか、と想うとやたらと十和瀬が可愛いやつに見えて来る。

「千夏さんは結婚しても同じような酒造会社なのには不満はないの?」

「不満って?」

「別な世界に憧れへんの」

「うちは小さいときから酒蔵を見て育ったせいか、これがうちの世界やと想うてるさかい、多分功治さんも一緒と思うから最初に出合った利き酒会であれだけ罵り合ったんやと思う、そやさかい一緒になったんやねえ」

「そうか、そこへ行くと次男は自由と云う名のしたにほっぽり出されているのか」

「そんなおかしな事言わん方が良いわよ」

 自分に言い聞かせたつもりが、千夏さんには大いに反発された。

「何でや」

「責任転嫁やさかい」

 彼女に言わせれば、自由と言う名の世間からの逃避行や、と言われても納得しがたいものがあった。造り酒屋の娘が同じ造り酒屋に嫁いだその人に、十和瀬はそこまで見透かされているのか気になった。


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