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千夏の話5

「それからなのよ、菜摘未さんが香奈子さんのアパートによく行くようになったのは」

「何しに行くんですか」

「勉強を教えてもらいにって、言っていたけれど、あたしの推測では鴈治郎さんと君枝さんの事を根掘り葉掘り聞いたようよ」

「なんでまた小学生の子が」

「だからなの、高校生以上の兄二人には聞けないけれど歳も近いお姉さんだし、なんでそうなったのか、その辺の複雑な事情はまだ恋を知らない菜摘未さんに香奈子さんも、そこは上手に説明したらしいの」

 でもどう解釈したのか、この頃に菜摘未の異性に対する接し方、いや、扱い方と言ったほうがいいようだ。それが形成された。

「いつ聞いたんだ」

「あの人、此の前、男の人を振ったでしょう、その時に聞いたのよ」

 その時はあたしも十和瀬家に嫁いで、大体の事が判ってきた頃なのに。菜摘未の行動は、彼女の予想以上の衝撃だったようだ。でんと構えている人なのに、それでも動揺するのだから千夏さんも面喰らったのだろう。幸弘を除く家族もあたし同様に面喰らって、それで少しは落ち着きを取り戻した。

「なんせルンルン気分でいつも会いに出掛けていた人が、一方的に自分から振ってしまうなんて、最初は何を考えてるのか解らなかった」

「それで何でそうするのか聞いたのか」

「そう、そしたらお父さんでなく、堪えてるお母さんが馬鹿らしくなってるうちに、あの男がお父さんに見えたから振った、ですって」

「嘘だ、十和瀬が俺に香奈子を紹介したから振ったのだろう」

「だとすれば凄い対抗意識なのに、最近の菜摘未さんは極めて落ち着いて冷静なのね」

「何処が冷静なんだ」

「幸弘さんがそう言ったのよ」

「十和瀬の奴、自分から仕掛けときながら、まあいいや、でもそのように仕組んだのは間違いない」


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