表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/168

千夏の話4

 菜摘未には、父と母の普段の会話から、余分なものを削り取ってゆくと、不自然な父の姿が目に付いて来る。特別な日でないのにソワソワして出て行った日は帰りが遅かった。特に母に対しての接し方が散漫になると、仕事に打ち込んでいるから菜摘未も父には余計な事を言わんようにと釘を刺された。此の辺りから母は、父に対しては打算的に成った。兄二人は学業より相変わらず遊び呆けて全く我関せず。決定的なのは季節になるとやって来る杜氏の人達が、父と母を見る目に何か陰りがいっとき見られ、母の態度にも一種の喪失感が漂った。それからだ。二人の兄と違って、お父さんにはお母さん以外に、別の女が居るのを薄々感づいたのは。小学生にしては感受性が強かった。いつかその正体を暴いてやると、子供ながらに母の恋敵を虎視眈々と狙っていた。それが思わず向こうからやって来た。自転車から転けて怪我をして入院した。大したことは無かったが大事を取ったのが父には災いした。入院した翌日にベッドで、家族に囲まれて半身を起こして騒いでいると、見知らぬ親子連れがやって来た。真っ先に動揺したのはお父さんだ。お母さんは何かを覚悟したの鋭い目をした。残りの兄弟は呆気に取られてポカーンとしていた。そこへ母が真っ先に「あんた誰や!」と訊ねた。

 女が答える前に、お父さんが此の親子を紹介した。此の時に一番驚いたのは、連れていた中学生の女の子が、姉だと知らされた時だ。女の子は知らされていたのか、怖気付おじけづく様子もなく普通に香奈子と名乗った。これに気を良くしたお父さんは、悪びれる様子もなくあたしと兄二人を紹介して、仲良くするんだぞと念を押されてしまった。此処で一番気を悪くしたのはお母さんだった。此の時はひと言も口を利かなかった。香奈子親子が出て行って初めて母は父をなじった。これを上手に説き伏せた父の話を、後であたしが聞いた時は、流石は浮き名を流した人だと知った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ