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千夏の話2

「順調でそろそろもろみの仕込みに入るから、でも新酒は年明けかしら」

 千夏さんに言わすと酒作りは似たような物でも水が違う、だから仕込みはそれに合わせるから最初は戸惑ったようだ。戸惑ったのは酒の違いだけでなく、今の夫の性格にもあった。とにかく酒作りに関しては慌てん坊らしい。あれで仕込みの杜氏の山西さんと、上手く行くのか心配した。お父さんの鴈治郎さんがやり手なだけにねと。酒だけでなく君枝さんの事もチクリと刺している

「でもね、灘でも酒は女と一緒で、眺めていただけでは埒が明かない。呑んでみて初めてその酒の良さが判るって言うのも満更でもないけれど、女はそうは行かないわよ」

 だから少しおっちょここいだけど、女性に対しては誠実過ぎるから気に入っている。豊かな表情を駆使して云うところが千夏さんらしい。

「そこへ行くと弟はどうなんです」

 十和瀬幸弘は掴み所の無い男だった。最初からあのデスカントショップの店長なんて、今の彼奴あいつにすれば合わないのは、最初から小谷は見抜いていた。

「じゃあどうして言ってあげられなかったの、十何年も付き合っていながら」

 と言うように、小谷より洞察力のある千夏さんでさえ見極めの難しい男だった。これに輪を掛けたのが妹の菜摘未だ。それは千夏さんも判っているようだが、義姉として上手くこなして心配はなかった。

「菜摘未はどうしてるんです、あの子はサッパリ判らん。俺が香奈子さんを知ってからやけに愛想良くなってる。どう思います」

 うふふ、と彼女は意味ありげな笑みを浮かべた。


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