香奈子の場合2
「あの店、余り詳しくないから聞こうと思って来たけど?」
「あのディスカントショップでしょう。お店広げたいけれどお酒だけではあれだけ広い駐車場があるのに勿体ないって会社から云われた話は聞いてる。でも幸弘さんは酒造会社の息子さんだから、お酒以外の商品知識が乏しいから思案しているようね」
「そうか、それで俺にお株が廻って来たのか」
「あらッ、小谷さんが次からうちの御用聞きをするの?」
「まだ決まってないけれど」
「嘘でしょう。もう決まってると云う顔してるわよ、菜摘未さんに嗾けられたでしょう」
「いや、なんとなく言われただけだ」
頼んだのは十和瀬幸弘だが、そうするように話を持って行ったのは菜摘未だ。彼奴は決断力が鈍くて余程切羽詰まっても言い出さない男だ。だが妹はかなり強引なところもあって此処へ相談したようだ。
「そう謂う話は菜摘未から来るんですか ?」
「そうね、まあ一応は姉妹だけれど、中学生になってから急に知った妹だから、何か他人みたいにずけずけと突っ込んで来る物言いなのよね、あの人は」
「遣りにくいちゅう事ですか」
「いえそうでなくて、あたしの場合はネチネチやられるのは好きじゃない、だからあのさっぱりした気性は気にならないけれど限度があるわね」
「エッ、ネチネチしているのは嫌いですか」
「相手が女の場合はね、それとも何か他に気になるんですか?」
「いやいや別に、とんでもない」
と慌てて否定したが冷や汗もんだった。
彼女は実に口と手先が交互に器用に動いている。彼が想うほどそんなに気にしていないようだ。そう言えば菜摘未は変わり身の早い女だ。香奈子が云うように、いつまでも尾を引かない。その代わり菜摘未はまたとんでもない事を考えるから、尾を引かないのでなく新手を繰り出してくる。




