妹の話2
古くて黒光りするように磨き込まれたテーブル席に三人は座った。骨董品の山から抜け出たような古めかしいジーパンにティシャツの若い学生風の女の子が注文を取りに来た。彼女が置いたコップに一口つけて菜摘未が、此処のブレンド珈琲を宣伝すると二人も同じ物を注文した。
「何だ此の店は良く来るのか」
「まあね、ちょっと込み入った話があるときにはね」
「何だ、サッサと用件を話し出さないのか」
苛つく小谷に薄笑いを浮かべた菜摘未は、先ずはお兄さんの話からと、希実世との遣り取りを話し出した。
「希実世さんからあたしに電話が掛かってきました」
いつだ。と焦る兄を睨み付けた。聞きたくない妻とのやり取りに引っ込みが付かなくなり、煙草を吸おうとして、妹に此の店は禁煙だと止められた。注文の珈琲が丁度到着して、十和瀬はひとくち飲んで気分を紛らわす兄を、横目で見て菜摘未は続けた。
兄は結婚すれば十和瀬家で妻と一緒に暮らすつもりだったが「話が違うじゃないの、造り酒屋を任せてもらえるから一緒になったのに同居するなんて嫌よ!」と妻に言われ「でも俺は次男だと言っただろう、そう好き勝手には出来ない」と反論した。
これに希実世さんが、此の家の仕来りではやっていけないと言われ、兄は此の家と関わりのある、全く別の会社へ就職を決めた。此の会社で実績を作って本社に移動すれば、店長の今より暮らしを良くすると口説き落として結婚した。処が今に成って店長の肩書きがなくなり、別の部門に配置転換をすることになった。それでも良い成績を残して見返してやればいいと言っても、今まで上手く行ってないのにもう懲り懲りと妻は更に機嫌が悪くした。
「そんないい加減な話で奥さんとやっていたのか、呆れた奴だ」




