妹の話1
龍馬通りは若者に人気があるようで、晩秋の中にあってもまだお酒がご法度な連中も結構居るようだ。その中で赤いタイトスカートは、出掛ける前に幸弘の意見を聞いて、上着だけカーディガンに着替えた。足元もハイヒールから、踵の高いパンプスに替えたが、それでも菜摘未はひときわ目立った。商社マンが闊歩する通りならまだしも、カジュアルな服装ばかりのこの通りには合わない。
「だいたいこの通りでそんなスカートを履いているのはお前だけだぞ」
通り過ぎた連中が、みんな振り返っているのは美人でなくて、その格好が合わないからだ、と兄から散々言われてしまった。
「あたしも好き好んでこんな格好してるんじゃないのよ。さっ千夏さんにサイズが合わなければ処分するって言われて、着たところへあんた達がやって来たからよ」
そうは言っても、似合うでしょうと満更でもないようだ。
「千夏さんは今の着物も似合うが、あのタイトスカートのスーツ姿も確かに似合うなあー」
そう言ったのは、兄でなく小谷だったが、菜摘未は頭に来た。
「どうせあたしには、社長への取り次ぎやスケジュール管理するような環境には適応能力はありません、だわよね!」
「オイオイまだ話はこれからなのに、此処で啀み合ってどうするんだ」
「お兄さんは本当に気を揉んでるの」
菜摘未は適当に生返事のように喋る兄に対して、今は序盤戦と言いたげに、いい加減な対応に済ましている。この兄妹の態度にはなんかこれからの話が憂鬱になってきた。いったい俺に何の用があるのかと。
まもなく彼女が良く利用している喫茶店が見つかった。懐古調の古いアンチュークの調度品が飾られた店だ。
押して開くガラス戸さえ、ギイギイと今にも壊れそうな悲鳴を上げている。それに共鳴するように、カウベルも忙しなく鳴っていた。




