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境田の想い4

 境田は香奈子との仲が進展していると知って安堵した。 問題はそれ以上に成ることを望んだ。つまりは早う一緒になってくれと、それが境田の切実なる望みだ。それは今の小谷にはまだ先の話で、香奈子とはもっと話を詰めないと現状では心許ない。境田が急かす裏には菜摘未の姿が映っていた。小谷には理解出来ない、いや、解ろうとしなかった菜摘未の一面を、境田は知り尽くしたのかもしれない。

「どうして、どうしてまた、半年ぶりに十和瀬酒造を訪ねたんですか」

 理由は分かり切っていた。それでも此の男の口から訊きたかった。だが意外な事を口走った。

「未練を断ち切るためです」

 期待とは反対の言葉に小谷は唖然とした。

「何で、また……」

 またまた此の男は、突飛押しで不思議な言葉を遺した。

「想い出に生きるために……」

 思わず心の中で”阿呆”と叫んだ。そんなもんは臆病者の見る幻覚や。花が美しく咲き誇れるのは春だけや、その中で厳しい冬を越せる人間が幾らいると思うのや。境田は選ぶ相手を間違えている。短い夏の後に長い冬が待ってるだけや。だが青春の真っ只中を突っ走る境田には、無常の忠告に過ぎないのだろう。

「小谷さんには小谷さんの想い出が綴られるように、俺には俺の想い出を綴って、なんでそんな不機嫌な顔をするんです」

 想い出は相思相愛の人との間で綴られれば美しく遺るが、そうでなければ惨めな過去を引き摺るだけだ。その内にそれが人生の足枷になって、にっちもさっちも行かなくなる前に断ち切るには境田は若すぎた。もっと年老いてから、そんな想い出でも懐かしく振り返れと云っても、おそらく今の彼には哀しいかな、聞く耳を持たないのだろう。


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