境田の想い2
「時と場合にも依りますよ」と境田の興味を惹かせた。
「彼女、一体何を千夏さんに伺ったのです?」
矢張り気になっているんだ。彼は今日の定食をナイフとフォークを使って食べていたが、確か此の前は箸で食べていたのを想い出した。
「いつもどっちで食べてるんです」
境田を両手に持ったナイフとフォークを見回して、その時の気分次第だと告げられた。その雰囲気が菜摘未に似ていると思った。
「菜摘未もお天気屋さんですが、向こうは山の天気の如く目まぐるしく変わるんですよ。千夏さんが気にしているのもそこです」
この前、菜摘未があなたに言付けたお酒の景品付き限定販売で、千夏さんが景品のサンプルを観たいから伺った。
「まだ持ってますか」
あのぐい呑みは気に入って、毎晩あの酒と一緒に呑むともう気分が昇天しそうだ。これには小谷も頷けた。きついアルコール度数の割には喉越しの刺激が少なく、滑らかなのが高級酒の醍醐味だ。酔いの回りも早いから、じっくり堪能して呑める処も境田は気に入った。口コミを広げるのには菜摘未さんの遣り方は悪くない。と感情が抜きにして千夏さんは賛成している。彼はコーンを器用に最後のひと粒を食べると苦笑した。
「菜摘未さんは香奈子さんを羨ましがってるんです」
エッ? どう言う凝っちゃ。子供時分は急にお姉さんが出来て、嬉しさと珍しさも手伝って付き纏っても、もうええ大人になったらそれはないだろう。それどころか心の中では恋敵のように、メラメラと闘志を燃やしていても不思議でない。
「どう言ってるんですか、香奈子さんを菜摘未は」
香奈子さんとなると、もう何を喋っているのか訊く順序まで滅茶苦茶になった。その混乱を見て、境田は菜摘未について語った。




