境田の想い1
境田もサラリーマンだが、小谷と同じ営業を担当していると知った。勿論扱っているのは全くの畑違いだ。彼は大学卒業後に計量器製作所へ就職した。勿論第一志望じゃあなかった。卒業前に受けた大手の会社には面接で振り落とされた。手に職を付けたいと謂う意欲がないのだ。その熱意のなさがもろに面接官に伝わった。その結果、最後に適当に受けた今の中小の会社に採用された。
そんな経歴を持つ彼に、卒業後に菜摘未からお誘いが掛かった。どうせ遊び半分に決まっていると付き合い出したが……。
小谷と同じ営業畑だから少し調べれば得意先ルートが分かる。当然営業車が昼食に立ち寄るのは、大抵は広い駐車場のあるファミリーレストランだ。そこで計量器製作所のロゴが入った車を見付けて店に入った。店内を外から見回して境田を見付け、相席を頼むと彼は快く承諾した。
「此の前も此の店に居ましたね」
小谷は彼と同じ日替わり定食を頼んだ。彼の第一声は、良く此処が分かりましたねだ。それにキチッと対応しないと、変に付け回されたと勘違いされては後々面倒に成っても困る。
「千夏さんからうちの商品の促進販売で色々と菜摘未について聞かされて、それで頼まれてあなたを探していたんですよ」
今日の定食はチキンのソテーだ。それに野菜とコーンが付いていた。彼はコーンを器用にフォークで上手く突いていた。良くあんな小さいコーンの粒をあの大雑把なフォークで突き刺している。
「嘘や、そんなことない」
急に突き刺したままのフォークを止めて言われた。一瞬小谷は何を言おうとしているのか戸惑って、直ぐに答えられない。それを悟ったのか少し表情を崩した。
「菜摘未さんがそんなことを千夏さんに頼むはずがない」
俺に言いたいことがあるのなら、直接メールで、有無を言わさず呼び出して来る。そんな回りくどいこと菜摘未さんはしないと断言された。
これでは話が続けにくい。




